本研究では、医原性有害事象の発生に関連していると報告されている、医療現場におけるコミュニケーション技能や協働能力の向上を目的に、チーム医療教育(TeamSTEPPS)を実施し、その有効性と教育としての汎用性について評価した。 本年度は、研究計画通り計34名の医療従事者を対象に、7つの多職種混成チームに分けチーム医療教育を実施した。対象者は、医師12名、看護師11名、薬剤師6名、事務職員4名、診療放射線技師1名で、臨床経験の中央値は12年、1年未満の者から最大で30年と実際の臨床現場を反映するような構成であった。 チーム医療教育前後で①「コミュニケ―ション」、②「チーム内での役割の明確化」、③「チームへの積極的貢献」、④「チームとしての安全対応」について評価したところ、すべての項目において有意差がみられ(P値:① <0.0001、② 0.0005、③ <0.0001、④ <0.0001)、チーム医療教育介入によりチーム内における協働能力やコミュニケーションの質が向上したことが示唆された。更に、実施したチーム医療教育について、①「医療現場への実用性」、②「チーム医療スキルの改善」、③「教育の自施設への汎用性」の観点から評価したところ、それぞれ①実用性あり(97%)、②改善あり(94%)、③汎用性あり(80%)と評価した。今後、更に詳細な解析を行い、その結果をもとに、標準化した教育プログラムの作成を行う予定である。
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