研究課題/領域番号 |
23659258
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田倉 智之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60569937)
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研究分担者 |
上塚 芳郎 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40147418)
上月 正博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70234698)
杉原 茂 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, その他 (60397685)
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キーワード | 支払意思額 / 費用対効果 / 質調整生存年 / 医療財政規模 / 国民の互助 / 追加負担額 |
研究概要 |
医療保険制度に関するWTPの研究は、674件(回答率24.2%)の標本において、ランダム効用モデルによる条件付ロジットによるコンジョイント解析(プロファイル;5属性・5水準)を実施した。本研究は、先行研究に無い「診療負荷(治療に伴う痛みや不快の程度と持続の期間を設定)」を属性に含むのが特徴的であるが、分析の結果、1Qaly相当の支払意思額(社会互助として直ぐにでも亡くなる他人を治療する国民負担の限度額)は、人口構成等の補正後、全体で327.2万円、平均年収帯よりも上の層で510.0万円となった。 また、「診療負荷」の属性が期待効用に及ぼす影響を分析したところ、全て統計学的に有意であり、例えば「期間(短)・負担(小)」は、標準化係数が0.570(p<0.001)になった。なお、「期間(長)・負担(小)」の診療負荷の属性は、全ての年収帯で655.2万円/Qalyとなった。以上から、診療負荷は支払意思額に大きな影響を与えると示唆され、結果が先行研究と一部異なるのは、治療プロセスを明示したことが理由と推察された。なお、新たな治療技術の追加導入に対する自己負担増加(世帯)の許容額は、約7.1万円/Qalyとなった。 財政規模との関係の研究は、影響の大きい病態(腎不全、心不全等)への介入の費用効果をPubMed等で検索した結果、例えば、末期腎不全の維持血液透析で4万~6万US$/Qalyとなった。この増分費用効用比における改善値と、前述の支払意思額と受療件数から、透析療法に伴う効用の総計をモンテカルロシミュレーション法によるモデルリングで算出した。その結果、現役世代の支払意思額では、平均1兆5,203億円/年の全体便益(2011年推計)になり、実際の公的医療費に比べて年間611億円多い結果となった。以上から、透析は他領域と同様に、実際の医療費が国民の負担許容を下回ると示唆された。
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