研究概要 |
本研究の目的は、福岡県の75歳以上の入院に関する電子レセプトを1年間連結し、医療費、入院日数、診療内容を病床別に明らかにすることである。診療内容に関しては、基本診療料、医学管理等、在宅医療、投薬、注射、検査、病理診断、処置、手術、麻酔、画像診断、リハビリテーション、精神科専門療法、放射線治療、薬剤、特定医療材料、食事療養のいずれに使われているかについて、病床別に定量的に明らかにした。一般病床:81,454件、療養床:15,761件、精神病床:4,490件が抽出された。平均入院日数は、図1に示すように一般病床:26.6日、療養病床:155.6日、精神病床:177.0日であった。療養病床、精神病床は、一般病床よりも1日当たり入院医療費は低いものの、入院日数が長く、入院基本料や食事・生活療養費が占める割合が高くなっているため、入院医療費は高くなっていることが明らかになった。診療料別年間入院医療費の割合は、一般病床では投薬・注射料が5.49%、処置料が2.38%、手術・麻酔料が8.35%、検査・病理診断料が2.85%、画像診断料が1.69%、その他診療料が3.13%であった。一方、入院基本料28.14%、食事・生活療養費が44.61%であった。後期高齢者の入院医療費においては、一般病床でも投薬・注射料、処置料、手術・麻酔料、検査・病理診断料、画像診断料といった行為の割合は相対的に低く、入院基本料と食事・生活療養費の生める割合が高いことが明らかとなった。療養病床では、入院基本料が32.39%、食事・生活療養費が64.62%で、この二つで97.01%であった。精神病床では、入院基本料が25.97%、食事・生活療養費が66.45%で、この二つで92.42%であった。このことは後期高齢者の入院医療費の多くが生活を支えるために使われていることを意味している。
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