研究課題/領域番号 |
23659264
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
明智 龍男 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80281682)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 超高齢化社会 / がん / インフォームドコンセント / 同意能力 |
研究概要 |
本年度は本研究に関してのプロトコールを作成し、名古屋市立大学倫理委員会に提出し、承認を得た。 名古屋市立大学病院では平成22年度より、精神科あるいは緩和ケアチームに依頼になった患者のうち治療同意能力に問題点がみられた患者に対して、後述する改訂版判断能力評価用構造化面接(Structured Interview for Competency and Incompetency Assessment Testing and Ranking Inventory-Revised: SICIATRI-R)を施行している。現在、患者データベースをもとに、SICIATRI-Rを施行した患者の同定をすすめている。 Structured Interview for Competency and Incompetency Assessment Testing and Ranking Inventory-Revised:(SICIATRI-R):北村らによりわが国で開発された同意能力評価のための半構造化面接である。本面接では、同意権限の理解、同意不同意の選択の明示、判断の他者への委譲がないこと、期待できる利益に関する理解、予測できる危険に関する理解、代替手段に関する理解、無治療から予測できる危険に関する理解、無治療の場合に期待できる利益に関する理解、回復願望、病的決定要因の有無、病識・洞察に関して評価を行い、同意能力のレベルを5段階に分類するものである。20分程度で施行可能とされる。本面接評価は主として精神疾患に罹患した患者を念頭においた面接であり、高齢のがん患者を対象とする場合には、面接の方法などを改編する必要がある可能性があるため、現在、修正の必要性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究プロトコールの作成および当該研究機関における倫理委員会による承認については予定通り、平成23年度の前四半期の内に終えることができた。一方、初年度はカルテを元にした後方視的研究を実施予定であったが、精神科および緩和ケアチームに紹介となった患者が予想以上に多く(概算で700名以上存在)、SICIATRI-Rの実施症例の同定に予想以上の時間がかかっている。現在、診療データベースをもとに、依頼されたがん患者の診療記録を抽出中である。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、予備的検討としてSICIATRI-Rを施行した患者を後方視的に検討しSICIATRI-Rを高齢がん患者に使用するうえでの問題点の有無を検討する。次いで、名古屋市立大学病院血液内科に入院となった65歳以上のがん患者(悪性リンパ腫と多発性骨髄者の入院患者でがん告知を受けた者)を対象に本研究に関しての説明を行い、同意を取得する。同意が取得できた場合には、原則として依頼から1週間以内に主治医に対して改訂版告知内容調査票(Disclosure Content Check List-Revised :DCCL-R)を用いて説明内容についての聴き取り調査を行い、説明内容が十分か否かを評価する。本調査内容を参考にしながら、患者に対して、修正されたSICIATRI-Rを施行し、同意能力に関して検討する。あわせて、患者の精神症状として、Mini Mental Examination (MMSE)を用いて認知機能障害の程度を評価するとともに、PHQ-9を用いてうつ病の有無の評価を行う。サンプリングは連続的に行い、本年度の目標症例数は、10名とする。 Disclosure Content Check List-Revised :DCCL-R 主治医が、患者に説明した医療行為の内容を記載するための調査票である。主治医の説明した内容として、決定権の保有、決定の依頼、治療の推薦、治療から予想できる危険の説明、治療から期待できる利益の説明、代替手段の説明、無治療から予測できる危険の説明、無治療の場合に期待できる利益の説明、病名告知の状況について調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の研究を予定通り遂行するために、適切な研究助手(例:看護師免許の保有者)等を雇用することで、研究対象となる患者の連続的なサンプリングや、研究を実施する具体的な時間のコーディネーション等が円滑にすすむよう配慮する。また、SICIATRI-Rの実施結果の解釈および研究結果の議論のために内外の研究機関等で研究打ち合わせを行う予定である。
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