研究課題/領域番号 |
23659266
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
澤口 聡子 帝京平成大学, 地域医療学部, 教授 (90235458)
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研究分担者 |
米山 啓一郎 昭和大学, 医学部, 教授 (60192431)
佐藤 啓造 昭和大学, 医学部, 教授 (20162422)
石島 正之 東京都市大学, その他部局等, 名誉教授 (70150696)
島谷 祐一 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20154263)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インド / ケラブ州 / コディンジ |
研究概要 |
身元を確認する法医学上きわめて重要な事項である個人識別において双子を見分けることが求められている。本研究では個人識別の手法として近年注目されているバイオメトリクスの一つとして心電図に着目し、特にその高周波成分である高周波心電図により双子を識別する画期的な手法を提案する。平成23年度には、その第一段階として、高周波心電図の計測システムの構築と、識別手法の確立について検討を行った。高周波心電図は微少な信号であるため、検出に使用する増幅器のノイズ対策が必要である。今年度はまずその検討を行い、計測可能なシステムを構築した。具体的には計測システムを電池駆動とし、商用電源からの雑音が混入しないよう工夫することにより、高周波心電図を確実に計測できる測定系を構築することができた。識別方法にはニューラルネットワークを採用し、識別の基礎的なシステムを完成させた。測定対象者は、昨年度は8人であったが、これを17人として、全例で識別可能なことを確認した。また、測定した誘導は、昨年度は第1誘導のみであったが、これを第2誘導、第3誘導でも行い、いずれのの誘導でも測定可能で、第2第3誘導では波形が大きく、第1誘導より識別しやすいことを確認した。一人あたりの計測時間が3時間程度要したことを改善し、一人20分で計測可能なものとした。次にこのシステム用い、一例ではあるが双子の識別を行った結果、高周波心電図の特徴には差異が見られたことから、手法の有用性を示すことができた。平成24年度は正常成人の被験者を100名以上募って計測データを追加し、識別の信頼性について検証してゆく予定である。同時に、25年度に行う双子での測定の被験者の準備を行う予定である。また、多数の双子事例の測定を現実化するために、東京大学教育学部付属中等高等学校に連絡をとった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、正常成人の個体数を100以上とする予定であったが、測定方法が100以上の個体数の測定の実際に耐えるものでなかったことから、測定方法の開発と向上をまたざるをえなかった。一人の測定時間が3時間程度有したこと、被験者数は8名のみであったこと、測定誘導は第一誘導のみであったことなど、実用にむけて不備が多く、この改善を待たざるを得なかった。また、開発者以外の誰でも簡便に計れるような工夫をする必要もあった。更に、測定を予定していた昭和大学では前期に行われる法医学実習時を利用して学生に周知し、この周辺の時期の測定を考えていたが、東京都市大学・昭和大学・帝京平成大学の3大学の倫理委員会の承認を得られたのが、後期の半ばをすぎてしまったことから、測定の時期を逸した。しかし、1例ではあるが、双子事例で識別率90%以上を得たことは今後の研究の可能性を示唆するものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度には、正常成人例を100例以上とし、同一事例について時期を半年あけてもう1度測定する。100例での識別率を確認するとともに、時期をあけて測定したときの同一人での一致率を確認する。25年度には、24年度の測定と同様な測定を、新しい正常成人例100例以上について繰り返す。これによって、本測定方法の安定性、有効性、再現性を確認する。双子については、東京大学教育学部付属中等高等学校より、医学研究は東京大学所属の研究者を代表とする研究以外受けていない旨の回答を得ており、東京大学教育学部佐々木司教授と今後の東大付属における25年度での測定と方向性について御助力を得られるかどうか調整する予定である。初年度の研究の遅れと、東大付属側の否定的な回答により、24年度は不可能となっており、とりあえず双子を公募する方向で、双子の被験者を準備する予定である。国内での双子の確保が難しく双子での多数測定が不可能で、精度確認が難しい為、インドでの双子測定を科研費の年度内に行うことは見合わせ、将来の課題とする予定(研究者等との接触は可能なら行うこととする)。これにかえて、同一人で、疾患に罹患した前後で、心電図波形の変化する可能性があるかどうかを確認することを検討中。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度には、正常成人例を100例以上とし、同一事例について時期を半年あけてもう1度測定する。100例での識別率を確認するとともに、時期をあけて測定したときの同一人での一致率を確認する。25年度には、24年度の測定と同様な測定を、新しい正常成人例100例以上について繰り返す。更に、25年度には、双子複数~多数事例における測定を行う。公募した双子、あるいは東大付属の双子学生(1学年10組20人で6学年で120人)について、年2回の測定を可能とする方向で調整し、これらの測定のための謝金、交通費等が必要になる。また、上記のように、昭和大学で100人以上の正常成人について、各々年2回の測定を行うので、そのための謝金が必要になる。これらの多数者の測定のために、高周派心電図の測定機器(1台約50万円を24年度に1台、25年度に1台追加作成)を追加して作成する予定である。当初の計画では、25年度にインドの双子の村での測定を行う予定であり、そのための旅費が計上されていたが、この旅費分は、正常成人数を当初の計画の2倍に増やし、測定回数も2倍に増やすこと、さらに疾患の罹患による波形変更の可能性の探索を行う経費とする。具体的には、機器開発費、謝金、交通費等であり、これに学会発表、論文発表のための経費が加わることとなる。
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