研究課題/領域番号 |
23659268
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
望月 眞弓 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (60292679)
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研究分担者 |
中島 恵美 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (90115254)
橋口 正行 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (10271355)
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キーワード | 脳機能イメージング / 前頭前野 / 機能的近赤外分光法(NIRS) / 光トポグラフィ / 服薬カウンセリング / 禁煙支援 / プラセボ効果 |
研究概要 |
本研究では禁煙支援を題材に、機能的近赤外分光法(以下NIRS)を用いて、薬剤師による服薬カウンセリングの効果を脳科学的変化と禁煙達成率を指標に検証することを目的としている。昨年度の検討から日立NIRSとほぼ同等に脳血流変化を評価できると考えられたダイナセンス製PocketNIRSを用いて、脳血流測定時の負荷課題3種類(文字性言語流暢性課題(LFT)、暗算課題(MA)、2-back課題(2-back))について、非喫煙者14名を対象に再現性を検討した。その結果、級内相関係数(ICC)においてLFTは高い再現性があった。一方、MA、2-backでは弱い相関であったことから、本研究ではLFTが適すると考えられた。続いて、喫煙者12名に対し、LFTを喫煙直後と4時間禁煙後に負荷して、脳血流変化量と、血中ニコチン濃度、modifiedミネソタ式ニコチン禁断症状調査票の得点または喫煙衝動調査票の得点との関連性を検討した。平均血中ニコチン濃度は喫煙直後 (5.53ng/ml)に比べ禁煙後 (2.29ng/ml)に有意に下がっており(p=0.005)、被験者は禁煙を遵守出来ていたと考えられた。喫煙直後及び禁煙後の脳血流変化量に統計学的有意差は見られなかったが、個人間のばらつきが大きかった。血中ニコチン濃度と脳血流変化量との間に有意な相関は認められなかった。禁煙後の脳血流変化量と離脱症状に関する得点との間には有意な正の相関がみられ (p<0.05)、 離脱症状を強く感じる人ほどLFT負荷時脳血流量が増大する可能性が示唆された。エゴグラムとLFTの結果との関連について、健康非喫煙者14名を対象に検討した結果、エゴグラムの各要素Z得点と脳血流の相関については統計学的に有意な相関ではなく、明らかな関連性を示すことはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に当初用いる予定であった日立NIRSから、使用法がより簡便なダイナセンスPNIRSを用いることに計画変更するため、日立NIRSとPNIRSの相関について検討した。このため、初年度に行う予定であった「喫煙の脳活動への影響に関する少人数パイロット試験」を平成24年度に実施した。また、PNIRSにより測定した脳血流量の変化の個体間差を検討するために時間を要したため、喫煙者での脳血流量の測定についてはパイロット試験に留まった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、禁煙指導を行う集団と特別な指導を行わない集団の2群について、禁煙と脳活動、および服薬カウンセリングと脳活動への影響について検討する。2群の割付けは無作為化比較試験とし、介入する薬剤師には禁煙カウンセリングの研修を行い、均一化したカウンセリングが実施できるように配慮する。これらの研究の場としてはOTC薬のニコチンパッチ製剤を販売している地域薬局を考えている。評価指標は、LFTと禁煙達成率およびエゴグラム(性格傾向)とする。なお、本年9月にアイルランド(ダブリン)で開催されるFIP(世界薬学連合)において、本研究について発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はPNIRSを用いて、新規に禁煙を開始する喫煙常習者を対象に、ニコチン製剤群、ニコチン製剤+服薬カウンセリング群に分けて、脳活動の変化を測定する。被験者は禁煙補助薬としてニコチネルパッチを使用し、禁煙達成率、禁断症状調査票、喫煙衝動評価票およびエゴグラム、呼気中CO濃度、血中ニコチンおよびコチニン濃度の測定を行う。最終的に、2群間の脳血流と、禁煙達成率、喫煙衝動、および禁煙カウンセリングとの関連性を評価する。また、禁煙達成率と喫煙衝動、エゴグラムの関連性についてもサブ解析する。この 計画にともない次の経費を予算として考慮する。1)血中ニコチン及び代謝物濃度測定関連費用(測定代+送料):200000円、2)ニコチネルパッチ:100000円、3)東大式エゴグラム:20000円、4)試験協力者謝礼金:400000円、5)国際学会参加・渡航費:500000円、7)その他文具代 :42639円
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