研究課題/領域番号 |
23659279
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
青沼 和隆 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10375488)
|
研究分担者 |
酒井 俊 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30282362)
島野 仁 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20251241)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 不全心筋 / 炎症反応 |
研究概要 |
レニン・アンギオテンシン系の活性化は、肥大心が不全心に移行することに関与している。Ang II投与は心肥大形成と心機能障害を引き起こすことを、小動物用心エコーにて評価した。左室駆出率 (EF)は、Ang II投与により野生型では有意に低下しており、一方SREBP-1-KOマウスではEFの低下が抑制されていた。 野生型とKOマウスの心臓のDNAマイクロアレイによって得られた遺伝子発現結果を詳細に解析し、GEO (Gene Expression Omunibus) の分類に従い、どの項目が特徴的に変化しているのかプログラム解析を行った。これまでの解析では、野生型において、炎症関連遺伝子群(chemokine関連遺伝子)と細胞外マトリックス関連遺伝子群(collagen I, III, TN-C, TGF-b)の発現変化が著明であった。一方、これらの遺伝子群の発現変化は、KO群においてはその程度は軽減していた。また、野生型のAng II投与群では、抗酸化に働く遺伝子群の発現低下とそれらの発現制御を担う転写因子Nrf2の発現が低下していた。 これらの結果は、不全心筋の成立にには慢性的な炎症反応が関与しており、線維化は二次性変化である可能性を示唆する。そして、そこには、抗酸化能の低下が関与していることが明らかになった。一方、KOマウスではこれらの変化が抑制されていた。このことから、不全心の形成にSREBP1は関与している可能性が示唆され、そこに抗酸化能の低下が関与していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災後の研究施設の混乱のため、動物実験を一時的に縮小しなければならなかったため。また、ルシフェラーゼ活性測定のためのベクター作製に予定以上に時間がかかったため、研究進展に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
不全心筋では、炎症性変化が認められることがマイクロアレイ解析により示唆されたため、これを確認するために、好中球・リンパ球・マクロファージ・樹状細胞といった、炎症・免疫に関連する細胞の存在を免疫組織染色・フローサイトメトリーで明らかにする。また、発現変化の認められた炎症関連遺伝子を定量PCRにて実際に発現変化が認められることを確認するとともに、蛋白レベルでも変化しているかをウェスタンブロット法・免疫組織染色で明らかにする。 炎症後線維化に関連する実験系として、細胞外マトリックス関連遺伝子群(collagen I, III, TN-C, TGF-b)の蛋白レベルを測定するとともに、ここに関係してくるサイトカイン、たとえば、IL-13の関与が示唆されているが、炎症後線維化に関与する因子としてIL-13の転写活性増加が認められるかをルシフェラーゼ活性の測定により検討する。また、IL-13を介した系が亢進しているかどうかをその受容体の発現亢進も含めて、検討する。 さらに、SREBP1の抑制作用を有するEPAを投与によって、KOマウスと同様な表現型が得られるかを検討するとともに、不全心筋の形成にSREBP1が関与するか否かを明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
マイクロアレイ解析で得られた遺伝子の発現変化が、蛋白レベルにも対応しているかを検討するために、ウェスタンブロット・免疫組織染色・EIAを施行するが、使用する各種抗体・アッセイキットの購入に充てる。培養細胞を用いた実験を行うため、メディウム・血清・培養器材の購入に充てる。また、ルシフェラーゼ活性の測定のための試薬等に使用する。 さらに、EPAの投与実験を行うため、マウスの購入費・Ang IIの購入費にも使用する。
|