本年度を含め、平成23-24年度の期間内に以下の研究を推進した。 1)TRE-MKK6c.a./tTS/TG マウス[Dox-rtTA(ドキシサイクリン-Tet受容体)複合体に応答して、p38を特異的に活性化させるMKK6c.a.を産生] のうち、高いtransgeneコピー数を有する個体と、CAG-rtTA/TGマウス [全身性にTet受容体を発現し、Doxの飲水により、転写因子として機能し得るDox-Tet受容体複合体を形成:1ラインのみ保有] を掛け合わせ、両transgeneを有する個体を作出した。そのマウスにDoxを飲水させ、SIRS症状を呈するかを検討したが、残念ながら期待した成体反応を得るまでには至っていない。理由として、rtTA発現臓器の限局(脳、心臓、肺)と低値の発現量などが考えられた.今後、高コピー数を有するCAG-rtTA/TGの作出、もしくは、用いるプロモーターの変更等して検討を加えていきたい。 2)p38α-KOマウスを盲腸結紮穿孔(CLP)-敗血症誘導モデルに供し、野生型マウスに比べて、発症抵抗性を示すことを認めた。 3)CLPモデルに代わる簡便な敗血症モデルを作出すべく、生糞便液を腹腔内に注入する方法の実験モデルとしてのreliabilityを検討した。生糞便液もしくは煮沸処理糞便液注入群、抗生物質処理個体への生糞便液注入群、sham群の4群について、生存率、自発運動活性、末梢血内のサイトカイン類の網羅的検出、脳内神経発火、血液培養、臓器内血管透過性の変化および血栓形成、臓器構成細胞の細胞死等を比較検討した。生糞便液注入群では、著しい自発運動活性の低下に準じた20時間内での死亡、様々なサイトカイン類の上昇を認め、煮沸処理群や抗生物質処理個体群ではこれらの反応に有意な抵抗性を示した。本モデルがユニークかつ簡便な敗血症モデルになり得る可能性が示唆された。
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