研究課題/領域番号 |
23659283
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西川 元也 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40273437)
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研究分担者 |
高倉 喜信 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30171432)
高橋 有己 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00547870)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 細胞治療 / 体内分布 / イメージング / PEG修飾 / 細胞個性 |
研究概要 |
人工多能性幹細胞(iPS細胞)が樹立されるなど、細胞治療に向けた環境が整備されつつある。しかしながらその実現には、体外から投与した細胞を長期間生存させるとともに、必要とされる局所でその生理機能を発揮させることが必須である。本研究では、細胞毎に大きく異なる個性に注目し、細胞を生体に投与したときの、1.生存期間(半減期)、2.体内分布、3.生理活性(薬理作用)を、治療効果を左右する要因として取り上げ、ドラッグデリバリーシステムの概念に基づき、遺伝子工学的手法と生物薬剤学的修飾法を駆使することで、「細胞個性に立脚したターゲティング型細胞治療システム」の開発を目指す。 初年度である平成23年度は、株化細胞にレポーター遺伝子を導入し、体内動態評価に利用可能な細胞株の樹立を試みた。また、遺伝子導入マウスから種々の初代細胞を回収し、体内動態評価の可能性についても検討した。その結果、マウス線維芽細胞株NIH 3T3細胞にホタルルシフェラーゼ遺伝子を安定に発現された細胞株の樹立に成功した。また、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子導入マウスから回収した骨髄細胞をマウスに投与することで、マウス体内での細胞動態を経時的に評価できることを確認した。そこで、投与した細胞の生存期間の延長化を目的に、最近注目を集めているスフェロイド化細胞の利用を試みた。均一なサイズのマイクロポケットを含むプレートを用いて、各種細胞のスフェロイド化を検討したところ、NIH 3T3、マウスβ細胞株NIT-1、マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7を含む検討したすべての細胞種において、細胞スフェロイドの開発に成功した。スフェロイドのサイズは、マイクロポケットの大きさで制御可能であった。さらに、懸濁NIT-1細胞と比較して高いグルコース応答性インスリン分泌活性を有するNIT-1細胞スフェロイドの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞スフェロイドの開発に成功したのが年度末に近かったため、その体内動態評価を次年度に先送りした。一方で、24年度に予定していた初代培養細胞での検討を前倒しして行ったため、全体としてはおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、以下の計画で研究を進める予定である。1.細胞スフェロイドのマウス体内挙動解析:これまでに開発に成功した各種細胞スフェロイドをマウスに投与し、レポータータンパク質を指標にその生体内挙動を追跡する。細胞の種類、スフェロイドのサイズ、投与部位の影響について検証し、生体内に長期間生存する投与システムに関する情報を収集する。2.生存期間延長を目的とした抗酸化酵素遺伝子導入細胞の樹立:これまでの癌細胞とホスト細胞との相互作用に関する検討結果から、細胞の生存及び体内分布には細胞間相互作用で発生する活性酸素が関与する可能性が推察される。そこで、さらなる生存期間延長を目的に、活性酸素消去酵素カタラーゼを遺伝子導入した細胞株を樹立する。細胞共培養実験及びマウス体内動態試験を行ない、このカタラーゼ遺伝子導入の影響を評価する。3.脂肪細胞含有細胞スフェロイドの開発:脂肪細胞が細胞生存に有用であるという最近の報告をもとに、脂肪細胞を含有する混合型細胞スフェロイドを新たに開発する。ここで、マウス線維芽細胞株3T3 L1細胞を脂肪前駆細胞として選択し、NIT-1細胞やRAW264.7細胞と共存させることで混合型細胞スフェロイドを作製する。脂肪細胞への分化のタイミングに関しては、スフェロイド化前後で比較検討する。得られたスフェロイドからのインスリン分泌あるいはサイトカイン産生を指標に、in vitroおよびin vivoにおける細胞機能に対する脂肪細胞共存の影響を評価する。4.マウスでの細胞治療システムの治療効果判定:以上の検討から長期生存する細胞システムを選択し、糖尿病マウスあるいは担癌マウスへの投与により治療効果を判定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰り越しした23年度分予算は、昨年度実施することを計画していた<平成24年度実験計画1.細胞スフェロイドのマウス体内挙動解析>に使用する予定である。<平成24年度実験計画1~4>に関しては、24年度に配分予定の研究費を用いて研究を遂行する。
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