研究課題/領域番号 |
23659286
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
有馬 直道 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30175997)
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研究分担者 |
伊東 祐二 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (60223195)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 患者TCRに対する抗体療法 |
研究概要 |
鹿児島大学病院臨床倫理審査承認を得たのち、文書にて同意を得られた成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)患者より末梢血の採取を行った。末梢血単核球分離後、フローサイトメトリー法を用いてTCRVβのレパトアを確認した。TCRVβ2が陽性であった患者末梢血単核球よりRNAを抽出し、5'RACE法を用いてその患者ATLL細胞TCRのαとβの全長をクローニングし、シークエンスにより単離を確認した。TCRβの発現ベクターをレンチウイルスベクター系により樹立した。尚本レンチウイルスベクターは培地へのドキシサイクリン添加によりTCRの発現を制御可能である。当初の計画ではATLL患者細胞由来S1T細胞株へのTCR遺伝子導入を予定していたが、TCRの発現を全く確認できなかった。後に本細胞株はCD3の発現が低下しており、細胞表面への発現を妨げることが判明したため、ヒト急性リンパ性白血病細胞株であるJurkat細胞株への遺伝子導入を試みた。Jurkat細胞株へのATLL患者TCRβ遺伝子導入はフローサイトメトリー法で確認できた。TCRVβレパトア解析と同様にTCRVβ2を有するTCRβの発現であった。本細胞を用いたATLL細胞由来TCRへの特異抗体の効率的な作成のため、ヒト抗体重鎖・軽鎖発現ファージライブラリーの構築を行った。正常ヒトリンパ球より抽出したRNAからcDNAを作成し、抗体重鎖と軽鎖特異的プライマーを用いて重鎖遺伝子ライブラリーと軽鎖遺伝子ライブラリーを作製し、リンカーDNAにより重鎖と軽鎖を結合させたのちにpCANTTAB5ベクターへ挿入し、単鎖Fvヒト抗体ファージライブラリを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATLL患者細胞入手のため鹿児島大学病院臨床倫理審査委員会の承認を速やかに得ることができた。ATLL患者より文書による同意を得た後に、TCRのクローニングを行ったが、5'RACE法を用いることで容易にTCRのクローニングが可能となり、現在発現ベクターの作成まで終了していることはファージライブラリーの構築の終了も含めて交付申請書に記載した実施計画通りに進捗できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は樹立した細胞株をファージライブラリーと反応させフローサイトメーターによるソーテイングでTCRを発現するJurkat細胞のみを分離する。このことにより、構成的な細胞成分に対する抗体ファージは除かれ、TCRを発現するJurkat細胞に特異的な抗体ファージのみが分離される。Jurkat細胞に結合したファージを酸性溶液で溶出後、大腸菌に感染させ、増幅させる。(バイオパニング法)このステップを3~4回ほど繰り返すことにより、TCR-Vβに特異的に結合するscFvヒト抗体ファージ候補を選出していく。最終的に、特定のTCR-Vと選出したファージとの結合性を、精製したTCR蛋白(大腸菌での発現精製物)をプレートに固定した系でELISAでも確認する。次いで、作製したTCR-Vβ特異的scFvヒト抗体の遺伝子を遺伝子工学的手法により、完全抗体から順に変換し、患者T細胞リンパ腫細胞との結合性、さらにはADCC活性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後も引き続き、より多くのATLL患者由来TCRの同定、クローニング、発現ベクターの樹立、ファージライブラリーを用いた特異的抗体の作成を行う。そのため単核球分離試薬、5'RACE用試薬、レンチウイルスベクター作成用試薬、Jurkat細胞を含めた培養用試薬、ファージライブラリー作成用試薬、ELISA、ADCC活性測定用試薬の購入を計画している。本研究成果の公表のため学術集会での発表を予定する。
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