研究概要 |
【目的】最近,カテキン類を多く含んだ緑茶の併用によりシンバスタチンの血中濃度が著しく上昇したことが報告された.その機序としてシンバスタチンの主な代謝酵素であるシトクロム P450(CYP)3A の関与が推察されるが,ヒト肝および小腸 CYP に対するカテキン類の阻害活性に関する報告は僅少である.本研究は green tea extract(GTE)および GTE の主成分である epigallocatechin gallate(EGCG)がヒト CYP 活性に及ぼす影響を検討した. 【方法】ヒト肝または小腸ミクロソーム(HLM および HIM)において,GTE(総カテキン量 86.5%,w/w)または EGCG 存在下,CYP2B6, 2C8, 2C19 および 3A に対する特異的基質の代謝反応を観察した.各代謝物の生成量を UPLC/ESI-MS 法により定量し,カテキン類の各 CYP に対する阻害活性について速度論的解析を行った. 【結果】HLM において,CYP2B6 と 2C8 に対する GTE の阻害定数は,それぞれ 10.2 および 10.9 µg/mL であった.また,EGCG の阻害定数は,4.0(CYP2B6),6.4(CYP2C8),26.1(CYP2C19)および 14.0 µM(CYP3A)であった.一方,HIM において CYP3A 以外の分子種は代謝活性が非常に弱かったため,CYP3A についてのみカテキン類の阻害活性を検討した.その結果,CYP3A に対する GTE および EGCG の阻害定数はそれぞれ 20.5 µg/mL および 30.6 µM であった. 【考察】GTE および EGCG はいずれの CYP においても阻害活性を有することが示唆された.特に,肝 CYP2B6 および 2C8 に対する EGCG の阻害活性は強く,薬物代謝に影響を及ぼす可能性が考えられた.
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