研究課題
熱帯地域には数々の感染症があるが、そのほとんどが正確に診断する技術も確立されていない。本研究の目的は、熱帯地域において大きな問題となっている、蚊媒介性の感染症であるデングウイルスおよびチクングンヤウイルス感染症の高特異性、高感受性、低コストな迅速診断キットを、日本とタイの診断キットメーカーとの共同研究として開発し、普及させることである。本年度は、大阪大学微生物病研究所と、文部科学省の新興・再興感染症研究拠点形成プログラム「大阪大学感染症国際研究拠点タイ感染症共同研究拠点」として、タイのマヒドン大学熱帯医学部に設置している共同研究拠点「Mahidol-Osaka Center for Infectious Diseases, MOCID」との共同研究として、このキット開発に必要な単クローン抗体の作製を行った。デングウイルスに存在する4つの血清型のいずれにも交差反応する単クローンは、Capsid 蛋白質に対しては得られず、NS1やEnvelpe蛋白質で得られた。一方、チクングンヤウイルスはタイの臨床分離株と強く反応する、Envelpe蛋白質に対する単クローン抗体が得られた。現在、これらを用いたイムノクロマトキットの開発が進行中だ。
2: おおむね順調に進展している
すでに、デングウイルスおよびチクングンヤウイルスと強く反応する単クローン抗体の作製は完了し、現在迅速診断キットの開発が進行中であり、ほぼ予定通りである。
まず、キットの評価を行う。培養細胞で増殖させた実験室株、臨床分離株をできるだけ多く検討し、すべてに特異的に、高感受性に反応することを確認する。また、感染価、PCR 法との比較から、どの程度のウイルス量が必要であるか等の情報を蓄積する。培養細胞で増殖したウイルスで特異性、感受性を試験し、高い評価が得られたイムノクロマトキットについて、マヒドン大学熱帯医学部内の熱帯医学病院で感染者血液を用いて評価を行う。その上で、学外の関連病院にもその有用性を説明し、治験への参加を依頼する。また、日本のメーカーで開発したイムノクロマトキットの特異性、感受性を維持した状態で、低コスト開発を目指し、タイの診断キット開発メーカー(i+MED 等)と共同研究として試作品を作製し、同様な手順で評価する。高感受性、高特異性、低コストと評価された迅速診断イムノクロマトキットについて、ワークショップ、ホームページ等での普及活動を行う。
培養細胞を用いるキットの評価については日本で実施するので、その消耗品が必要である。一方、タイで実施する臨床サンプルの入手のための費用が必要である。また、日本からタイへの派遣費、タイからの日本への招聘費が必要である。研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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