最終年度は自己免疫疾患患者総数(140万人)の8割以上を占める7種類の自己免疫疾患について血清解析(全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、血管炎症候群、ミクリッツ病)を行った。各疾患7~14名の患者を解析した結果、疾患特異的な自己抗原は65種類見つかったが、検出頻度は最大で33%と低かった。一方、それぞれの自己抗原について各疾患との関連性を論文情報をもとに考察すると、3種類の自己抗原がすでに自己抗原候補として報告されていたことから、本解析の妥当性が示唆された。また、ミクリッツ病はこれまで自己免疫疾患か否かという点で議論されてきたが、同一の手法で解析した結果を自己免疫疾患と比較すると、疾患特異的な自己抗原の数が従来の自己免疫疾患に匹敵し、自己抗体のサブタイプ別に考察すると、皮膚筋炎・混合性結合組織病・血管炎症候群に類似していることがわかった。本研究の成果について、その意義と重要性を以下に列挙する。 ・これまで免疫複合体の”種類”が全くわかっていなかった自己免疫疾患群について、イムノコンプレキソーム解析法という統一的手法で初めて明らかにした。 ・血清解析で見つかった疾患特異的な自己抗原はいずれも検出頻度が低いが、該当の免疫複合体を選択的に検出する免疫学的測定法を別途開発することで、診断マーカーとして応用できる可能性がある。 ・自己免疫疾患として定義されていないミクリッツ病の解析結果を既存の自己免疫疾患と比較し類似性を検証できたことで、本解析を自己免疫疾患の分類や類似性の評価に応用できる可能性が示唆された。
|