研究課題/領域番号 |
23659302
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
甲斐 雅亮 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00160953)
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キーワード | エイズ / HIV / 変異 / 薬物耐性 / プロテアーゼ / 基質特異性 / 蛍光反応 / ペプチド |
研究概要 |
HIVプロテアーゼ(HIV-PR)は、HIVの複製に重要であり、その阻害剤がエイズ治療薬として臨床応用されている。HIVはゲノムとしてRNAを持つため、容易に変異を起こすが、HIV-PR遺伝子における変異は、薬剤耐性と密接に関係している。したがって、HIVの変異と薬剤耐性を識別する検査法は、診断や治療だけでなく、抗HIV薬開発においても重要である。これまでに、申請者は、ペプチドに特異的な蛍光誘導体化反応を用いた、新規HIV-PR活性測定法を開発してきた。この測定法は、HIV-PRによって基質から生成された分解ペプチドを蛍光誘導体化後、HPLCによって蛍光検出するものであるが、複数の基質を使用し、そのクロマトグラムパターンを比較することで、基質特異性が変化した変異型HIV-PRを識別できると考えられる。 そこで、これまでの基質Ac-SGIFLETSに加えて、新たに2種類のアセチル化ペプチドを基質として使用した。それぞれの基質を用いて酵素反応を行い、蛍光誘導体化後、HPLCによって検出したところ、各基質から生成した分解ペプチドをそれぞれ検出することができた。さらに、これら3種類の基質を同時に使用したところ、それぞれの分解ペプチドを一斉に検出することができたことから、本法は、基質特異性の違いを利用して変異型HIV-PRを識別できると考えられる。 HIV-PRにより分解されたペプチドをHPLCによって検出する場合、1回の測定に約20分間を要する。そこで、迅速な測定法を開発するために、HPLCの代わりにマイクロチップ電気泳動装置を使用した。その結果、測定時間を、約1分間に短縮することができた。 現在、本検査法によって野生型と変異型のHIV-PRを識別できるか検証するために、変異型のHIV-PRを作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、ペプチドに特異的な蛍光誘導体化反応を応用した、HIVプロテアーゼの新規活性測定法を開発しており、この測定法は、複数の基質を同時に使用できることを確認している。また、HPLCに加えて、マイクロチップ電気泳動装置も使用できることが確認できたため、迅速な変異型HIV識別法の開発が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子組換え技術によって、種々の変異型HIVプロテアーゼを作製し、それらの基質特異性や阻害剤(治療薬)に対する感受性を調べることで、基質特異性の違いを基にした薬剤耐性能を有する変異ウイルス識別法を開発する。また、短時間での測定が可能なマイクロチップ電気泳動装置を用い、識別法のハイスループット化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰り越しは、今年度の研究成果を学会発表するための費用として使用する。次年度の研究費は、当初の計画通り、消耗品費、旅費、謝金等に使用する予定である。
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