研究課題
本研究の目的は、多剤耐性菌の多くが産生するカルバペネマーゼについて、特異的抗体を用いた免疫学的検出法により迅速に検出する方法を確立し、検査設備が充分には整っていない中小病院の細菌検査室でも安価かつ簡便に用いることができるようにキット化することにある。本年度の当初計画では、DDBJ/EMBL/GenBankデータベースに登録されている3種類のカルバペネマーゼ(IMP型、VIM型、KPC型)のアミノ酸を検索することにより特異性を示す抗原ペプチドを検索・合成し、それを用いてポリクローナル抗体を作製する予定であった。しかし、本年度は研究費の減額支給の可能性の通達を受けたことから、研究費不足が懸念されたため、特異的抗体作製計画を見直し、その一部の変更を行った。すなわち、当初の計画で作製した抗体の特性性を検定するためのレファレンスとなるカルバペネマーゼを大量に精製した後に、精製酵素を用いて特的モノクローナル抗体を作成することに計画変更した。そのために、大腸菌の発現ベクターシステムであるGST Gene Fusion Systemを用いてベクターpGEX-6P-1にIPM-1とKPC-1のカルバペネマーゼ産生遺伝子をPCRクローニングして、GST融合蛋白質として効率よく発現させ、固定化グルタチオンで簡単に精製することを計画した。現時点ではIMP-1についてはPCRクローニングが終了し、GST融合蛋白質として発現していることを確認しており、大量精製に向けての準備を行っている。KPC-1については現在PCRクローニングを行っている。一方、大学病院の細菌検査室を通じて、臨床分離のカルバペネマーゼ産生菌を収集および保管を行ってきた。本年度は主として腸内細菌科の菌種に焦点を当てて収集行った結果、現時点で耐性遺伝子の解析を行ったところ、IMP-1型カルバペネマーゼ産生株6株を分離・保管している。
3: やや遅れている
本年度当初は研究計画に沿って研究を行っていたが、平成23年7月29日付の「平成23年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金(挑戦的萌芽研究))交付決定通知書によると平成23年度3月11日に発生した東日本大震災により甚大な被害が生じたことから緊急財源確保のために助成金の減額交付の可能性があるために、当面、助成金の執行には慎重に留意する旨の通達があった。そのために8月の時点で、助成金の減額交付になった場合にも、研究計画が滞りなく進められるように、当初進めていた研究計画の一部見直しを行い、変更したために、本年度中に作製する予定であった特異抗体の作製が遅れている。
本年度は前述したような理由により、研究計画のうち、カルバペネマーゼに対する特異抗体の作製方法を変更したために、研究計画に遅れが生じた。現時点では、平成24年年度中に3種類のカルバペネマーゼに対する特異抗体の作製完了を予定している。特異抗体作製後の研究計画については、当初の研究計画に沿って進める予定である。
本年度は、研究計画の一部見直しを行いカルバペネマーゼに対する特異抗体の作製方法を変更したために、研究計画に遅れが生じた。そのために、本年度の研究計画に計上していた経費うち、抗体作製関連に充当する経費を次年度に使用する研究費として繰り越しした。平成24年度は、繰り越した研究経費(779,345円)と当該年度交付申請している研究経費(700,000円)を主として特異抗体の作製および特異抗体を用いた迅速検出法への応用研究に充当する。
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