本研究の目的は、多剤耐性グラム陰性桿菌の多くが産生するカルバペネマーゼについて、検査設備が充分には整っていない中小病院の細菌検査室でも安価かつ簡便に用いることができる特異的抗体を用いた迅速検出法を確立することである。 本年度は、大腸菌の発現ベクターシステムであるGST Gene Fusion Systemを用いたカルバペネマーゼIMP-1およびKPC-1の大量精製を行った。特にGST封入体(凝集体)形成から大量精製が危ぶまれたKPC-1についても、可溶化および大量精製に向けての検討を行ったところ、GST封入体のリフォールディングキット等の使用により可溶化に目途がついたために、大量精製が可能となった。 次いで、IMP-1およびKPC-1の精製酵素を用いて、それぞれの特異抗体の作製を行った。当初の予定ではいずれの酵素についても、モノクローナル抗体を作製する予定であったが、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製には約半年の期間がかかるため、本年度が最終年度である本研究実施期間を考慮して、IMP-1についてはウサギを用いたポリクローナル抗体の作製を、KPC-1についてはマウスを用いたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの確立を目指すこととした。その結果、IMP-1については、ポリクローナル抗体の作製が終了し、本抗体により感作したラテックス粒子を用いてIMP-1型カルバペネマーゼ産生グラム陰性桿菌をラテックスス凝集反応により検出する方法を確立した。 一方、KPC-1については、現時点ではモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ確立のためのスクリーニングを行っており、数個のハイブリドーマが確立できる状況である。今後は、本研究で作製したモノクローナル抗体等を用いたラテックス凝集法あるいはイムノクロマト法によるカルバペネマーゼ産生菌の検出法を確立し、特許出願する予定である。
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