〔聴診システムの開発〕自然気胸症例の肺音をデジタル信号で記録する聴診システムの開発を行った。聴診システムはマイクロフォンと胸壁にあてる外筒それにボイスレコーダーで構成される。特に臨床の現場で簡便に聴診できる点を優先した。マイクロフォンとして最終的にはaudio-technica社のAT99033がサイズ、形状、機能の面から最適であった。外筒としては市販の聴診器をゴムのチューブ部分で切断したものなどを試したが、最終的に建築材料のドアのストッパーを使用した。メンブレンには適切なものはなく使用しなかった。ボイスレコーダーとしては高品質の音の記録が要求されることからPCMレコーダーを使用している。すなわちソニーのリニアPCM-D50とオリンパスのLS-100の双方を用いている。いずれも2チャンネルであることから2か所の肺音を同時に記録することができるようになった。 〔肺音の解析〕音の解析は工業領域では製品の検査などで広く研究が進んでいるが音の性質の点で工業用解析ソフトをそのまま臨床には用いることができなかった。今回は日本肺音研究会の呼吸音セミナーで配布された解析ソフトEasyLSA を使用した。 〔空気漏れ音の研究〕今回の検討では胸腔ドレナージ挿入前の自然気胸症例では胸壁から空気漏れ音を記録することはできなかった。現実にブラからの空気漏れはかなり緩徐なものであり音を発しない可能性が高い。これに対し胸腔ドレナージ後には空気漏れの量が増加するが、挿入後には皮下気腫が出現し胸壁からの音の記録は困難になった。
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