研究課題
昨年度までに、正常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞由来の膜画分を用いたCSP-ELISAで患者血清中の抗血管内皮細胞抗体(AECA)を測定すると、全身性エリテマトーデス(SLE)において、IgG-AECA、IgA-AECAがそれぞれ95%、30%陽性になり、IgA-AECA高値患者において腎炎の活動性を示す病理組織像が多く観察されることがわかった。IgA-AECAについてはほとんど報告がなく、病態との関連をさらに詳細に検討した。ループス腎炎が認められるSLE患者51名、および認められないSLE患者25名について、IgA-AECA抗体価と活動性病変の有無を調べたところ、感度、特異度がそれぞれ0.92, 0.72となる検査法と判断できた。IgA-AECAと管内性細胞増多との関連は、IgA-AECAがループス腎炎における血管内皮細胞の障害と関係することが想定され、ループス腎炎の有用な血清マーカーになり得ることが示唆された。また、強皮症患者86名についてCSP-ELISA法でAECA値を測定した。強皮症は皮膚症状を示すことから、正常ヒト皮膚微小血管内皮細胞由来の膜画分を用いた。その結果、IgG-AECA、IgA-AECAがそれぞれ58%、64%陽性になった。臨床症状との関連については、IgG-AECA陽性患者では、肺線維症の頻度が高く、肺活量(%VC)、拡散能(%DLco)は低値を示した。また、IgA-AECA抗体価は、皮膚硬化の程度を示すmTSS、心不全のマーカーである血清NT-proBNP値と正の相関が、また%DLcoと負の相関が見られた。CSP-ELISAによるAECAの測定は、強皮症の重症度を示す有用な血清マーカーとなり得ることが示唆された。免疫沈降法により自己抗原の検出を行い、SDS-PAGEで患者特異的なバンドが得られ質量分析を行ったが、新奇自己抗原の同定には至らなかった。
すべて 2014
すべて 学会発表 (3件)