研究課題/領域番号 |
23659313
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
今村 理恵 久留米大学, 医学部, 助教 (70309764)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | トランス・スプライシング / バイオテクノロジー |
研究概要 |
生命には、異なったmRNA分子がスプライシングの過程で互いに融合して新しい遺伝子が生まれるトランス・スプライシング現象が存在するが、この現象は、線虫やトリパノソームのみならず哺乳類にも存在することが明らかにされてきている。しかし、哺乳類におけるトランス・スプライシングを受ける遺伝子(以下、トランス・スプライシング遺伝子)の発見は散発的にとどまり、その全容は不明のままである。研究の進展の最大の障壁は、トランス・スプライシング遺伝子を発見する系統的な方法論が欠如していることにある。そこで、本年度はトランス・スプライシング遺伝子を発見する新規システムを開発を行った。まずcDNAライブラリーに特異配列アダプター付加し、特異配列前後の酵素処理による、2段階環状化で単分子環状化DNAのみを作成する方法を開発した。システム実証には成功したものの、精度上1/1000にノイズを減少させることが限界であり、本研究の展開にはこの方法ではノイズ排除が不十分であると判断した。そのため、本システムをさらに精錬し、新たに特異配列並置アダプター法を開発した。この方法は、複数分子環状化DNAのノイズの混入を減少させるのではなく、不適格ノイズそのものを解析上(in silico)で完全に排除できる新規の方法であり、高精度にトランス・スプライシングのキメラmRNAを探索することが可能である。本開発システムは、未知のトランス・スプライシング遺伝子の発見を可能にする新規の方法であり、体系的なトランス・スプライシング遺伝子の探索・発見を行う基盤技術の確立に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、申請時の方法をさらに改良することから、体系的なトランス・スプライシング遺伝子の探索・発見を行う新たな基盤技術の確立とその実証に成功した。本システムは、新たな特異配列並置アダプター法で、不適格ノイズそのものを解析上(in silico)で完全に排除できる新規の方法であり、トランス・スプライシング遺伝子の探索の効率とスピードは一層高まると期待される。実際のスクリーニングも現在進行中であり、何より基盤システムの高精度化に成功したことから、全体として、(1)当初の計画以上に進展している、と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、申請時の予定通り次の2点を中心に実施・継続する。(1)トランス・スプライシング遺伝子発見への本システムの応用:新規開発システムを実際の生体組織へ応用する。対象組織としては、アプローチの容易なマウス組織を対象として胚発生過程および全身諸臓器におけるトランス・スプライシング遺伝子のスクリーニングを開始する。(2)本システムの臨床サンプルへの応用および一般への研究ツールとしての普及:ヒトにおいて比較的アプローチが容易な、造血・リンパ系組織および消化器系生検組織を対象に本システムを応用するとともに、研究ツールとして広く普及するようシステム自体をより洗練する。これらの研究推進から、トランス・スプライシング遺伝子群の生成・変化を包括的に捉える、"fusion transcriptome" という新しい遺伝子検査分野の開拓を期待する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画として、まず本システム応用のための分子生物学試薬(制限酵素・修飾酵素)、cDNA ライブラリー作成試薬として250千円を、マウス購入および維持費用として100千円を予定し、次にシステム運用としてのシークエンサー稼動試薬として600千円を使用予定である。その他、成果報告としての学会参加・研究成果投稿等に230千円を予定している。
|