痒みは,非常に不快な感覚であり,特に疾患が原因で起こる痒みは患者のQOLの低下に加え,掻破により皮膚に至っては炎症の誘発と憎悪,眼に至っては白内障へと導く場合があり,痒みの制御は非常に重要とされている。しかし,難治性の掻痒に対しては,特に,痒みの第一選択薬である抗ヒスタミン薬が無効である場合が多く,新規鎮痒薬の開発が急がれている。これまで多くの製薬および関連企業が,鎮痒薬の開発を試みてきたが,痒みが主観的な感覚であるため,感覚におけるばらつきが大きく治験による治療効果の評価が難しく開発がストップすることがほとんどである。また,動物においても多くの痒みのモデル動物が作出されているが言葉でコミュニケーションが取れないため掻き動作を痒み行動として評価している。そこで,感情に関係なく痒みや薬効を評価できるバイオマーカーがあれば,製薬企業や臨床にとって鎮痒薬開発や治療薬の評価に大きく貢献すると考えその探索を試みてきた。これまでに,血清中のACTHがその候補として見出してきた。さらに,今回,アトピー性皮膚炎マウスモデルを用い,抗アレルギー薬の1週間投与後,顕著に痒み反応が減少したマウスの投薬前後での血清中の変化タンパクを2次元電気泳動法を用いて解析した。投薬前後で増加したタンパク質のスポットは59個,減少したスポットは17個であった。血清中には多くのIgGが含まれていることから,血清をカラムを用いてIgGをできるだけ除去すると投薬前後で増加したタンパク質のスポットは67個で減少したスポットは19個であった。現在,ほかのマウスのサンプルを解析中であり,マウス間で重複する変化タンパク質のスポットを見出し,TOF-MS法により関連タンパク質の同定を行う予定である。
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