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2012 年度 実施状況報告書

慢性疼痛の中枢機構の解明と新規治療法への展開

研究課題

研究課題/領域番号 23659318
研究機関大阪大学

研究代表者

豊田 博紀  大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00432451)

キーワード慢性疼痛 / 帯状回皮質 / シナプス
研究概要

末梢性炎症疼痛モデルマウスの前帯状回皮質では、興奮性シナプス伝達の伝達効率増加が生じることが知られている。昨年度、素量子解析を用いて詳細に検討したところ、末梢性炎症疼痛モデルマウスの前帯状回皮質では、正常マウスと比較して、興奮性伝達物質の放出確率及び放出可能シナプス小胞数がともに増大していることが明らかとなった。しかしながら、前帯状回皮質における局所神経回路の動作機構が、慢性疼痛刺激によりどのように変化するかは不明である。そこで光学的膜電位測定法を用い、局所神経回路の動作機構が、慢性炎症性疼痛刺激によりどのように変化するかを検討した。野生マウスおよび慢性疼痛モデルマウスの前帯状回皮質を含むスライス標本を作製し、膜電位感受性色素(RH-414)を負荷した。そして、前帯状回皮質第3層下部に刺激用のタングステン電極を刺入し、通電によって生じる興奮伝播の時空間パターンを野生マウスおよび慢性疼痛モデルマウス間で観察した。野生型マウスおよび慢性疼痛モデルマウスの前帯状回皮質スライス標本では、第3層下部刺激によって生じる興奮が第2/3層に垂直伝播し、そこから第2/3層内で水平的な伝播が認められた。慢性疼痛モデルマウスの前帯状回皮質では、野生型マウスに比べて、皮質第2/3層での水平方向の興奮伝播範囲が大きく、その時間経過も延長していた。これらの結果から、慢性炎症性疼痛刺激により、前帯状回皮質における興奮伝播の増強が生じる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

膜電位感受性色素を用いた光学的測定法の結果、慢性炎症性疼痛モデルマウスでは、コントロール群マウスと比較して、前帯状回皮質第3層下部刺激によって生じる興奮伝播範囲が拡大していることを観察した。このように、慢性炎症性モデルマウスの前帯状回皮質において、局所神経回路の動作機構変化を明らかにすることができたため、概ね期待した結果が得られたといえる。しかしながら、この興奮伝播範囲の拡大に、TASK1/3チャネルが関与しているか否かを薬理学的に明らかにしようと試みたが、十分な結果が得られていない。このことから、当初の研究計画よりもやや遅れている。

今後の研究の推進方策

今年度は、慢性疼痛時における興奮伝播増強機構をさらに検討する。興奮伝播におけるイオン機序として漏洩Kチャネルに着目し、興奮伝播に果たす役割を検討する。まず、正常マウスのスライス標本を用いて実験を行い、バリウム(TASK1チャネル拮抗薬)または亜鉛(TASK3チャネル拮抗薬)投与前後で興奮伝播様式を記録する。得られる結果から、正常マウスの興奮伝播におけるTASK1又はTASK3チャネルの役割を検討する。次に、同様の実験を慢性疼痛モデルマウスのスライス標本を用いて行い、バリウムまたは亜鉛が興奮伝播様式に果たす役割を検討する。また、子宮内電気穿孔法を用いたTASK1/3遺伝子ノックダウンマウスを用い、興奮伝播および慢性疼痛におけるTASK1/3チャネルの役割を検討する。これらの結果から、慢性疼痛時の興奮伝播における漏洩Kチャネル(TASK1又はTASK3チャネル)の役割を明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

膜電位感受性色素を用いた光学的測定法の結果、慢性炎症性疼痛モデルマウスでは、コントロール群マウスと比較して、前帯状回皮質第3層下部刺激によって生じる興奮伝播範囲が拡大していることを観察した。この興奮伝播範囲の拡大にTASK1/3チャネルが関与しているか否かを明らかにするため、薬理学的に検討する。また、電気穿孔法を用いたTASK1/3遺伝子ノックダウンマウスを用い、興奮伝播および慢性疼痛におけるTASK1/3チャネルの役割を明らかにする。未使用額は、これらの実験のための研究経費(一般試薬、遺伝子導入用試薬、実験動物、その他消耗品)にあてる予定である。また、研究成果発表のため、平成25年度は、国内1回・海外1回の学会参加を予定している。さらに、英文雑誌投稿料として使用予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] GABAB receptor-mediated presynaptic inhibition reverses inter-columnar covariability of synaptic actions by intracortical axons in the rat barrel cortex2013

    • 著者名/発表者名
      Sato, H. et al.
    • 雑誌名

      European Journal of Neuroscience

      巻: 37 ページ: 190-202

    • DOI

      10.1111/ejn.12041

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Illusion caused by vibration of muscle spindles reveals an involvement of muscle spindle inputs in regulating isometric contraction of masseter muscles2012

    • 著者名/発表者名
      Tsukiboshi, T. et al.
    • 雑誌名

      Journal of Neurophysiology

      巻: 108 ページ: 2524-2533

    • DOI

      10.1152/jn.00997.2011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Capsaicin induces theta-band synchronization between gustatory and autonomic insular cortices2012

    • 著者名/発表者名
      Saito, M. et al.
    • 雑誌名

      Journal of Neuroscience

      巻: 32 ページ: 13470-13487

    • DOI

      10.1523/​JNEUROSCI.5906-11.2012

    • 査読あり
  • [学会発表] バレル皮質錐体細胞においてPRIP遺伝子欠損によりGABA(A)電流の脱感作および再感作が増強する2013

    • 著者名/発表者名
      豊田博紀 他
    • 学会等名
      第90回日本生理学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京)
    • 年月日
      20130327-20130327
  • [学会発表] Phospholipase C-related inactive protein modulates desensitization and resensitization of GABAA receptor currents in the barrel cortex2012

    • 著者名/発表者名
      Toyoda, H. et al.
    • 学会等名
      42th Society for Neuroscience
    • 発表場所
      Ernest N. Morial Convention Center (New Orleans, USA)
    • 年月日
      20121014-20121014
  • [学会発表] PRIP遺伝子欠損によりバレル皮質錐体細胞におけるGABA(A)電流の脱感作および再感作が増強する2012

    • 著者名/発表者名
      豊田博紀 他
    • 学会等名
      第35回日本神経科学大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(名古屋)
    • 年月日
      20120918-20120918

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公開日: 2014-07-24  

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