本研究では、活性化ミクログリアを痛みのバイオマーカーとした痛みイメージングの達成を目的とし、PETプローブの開発を計画した。 まずミクログリアの活性化と末梢性ベンゾジアゼピン受容体(PBR)の発現量について、インビトロ実験系で評価を行った。中大脳動脈閉塞処置によりミクログリアの活性化を誘導したラット脳スライスを作製し、PBRリガンドとして[3H]PK-11195を用いたインビトロオートラジオグラフィを施行した。また、隣接切片における活性化ミクログリアの増加をOX-42およびIba-1をマーカーとした免疫組織染色法により確認した。その結果、TTC染色により虚血領域を認めた側(虚血側)において、OX-42およびIba-1の発現の上昇を認めた。また、[3H]PK-11195についても、正常部位と比較して虚血側において高い集積を示し、その分布はIba-1やOX-42の染色部位と一致した。これらの結果から、ミクログリアの活性化を分子イメージングする標的分子として、PBRが有用であることが示された。 そこで、PBRを標的とした高比放射能マルチバレントPETプローブとして、68Ga錯体のキレート部位であるDOTAにPBRのリガンド骨格を有するN-(6-aminohexyl)-1-(2-chlorophenyl)isoquinoline-3-carboxamide (PK)を2つ導入したDOTA-PK2を設計、合成した。得られたDOTA-PK2を67GaCl3とpH 4.6、95˚Cで60分間反応させることで、放射化学的収率50%以上、放射化学的純度99%以上で67Ga-DOTA-PK2を得ることに成功した。
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