脊髄後角は感覚入力の入り口であり、病態を考えた時、この部位での情報処理メカニズムを明らかにすることは非常に重要である。教科書のように一次求心性感覚神経からの入力を受け脳へ投射しているような脊髄後角細胞は1%にも満たないほどである。ほとんどの細胞は脊髄後角で局所回路を形成しており、脳へ送られる脊髄アウトプット情報を修飾しているのである。脊髄後角の機能は、感覚情報を脳へ中継することが注目され、ほとんどの細胞が関係している脊髄後角における感覚情報の修飾についての研究は、これまで比較的後回しにされてきたような状態にある。 本研究の目的は、脊髄後角で局所回路を形成しているインターニューロンの結合様式を明らかにすることである。そのために、もっとも効率的であると考えられる、単一インターニューロンからの経シナプストレーシングを可能とする方法を開発しようとしている。具体的には、経シナプストレーサーをコードするプラスミドを単一細胞エレクトロポレーション方でインターニューロンに導入する。この方法は条件設定を継続して行っている。 また、神経回路の解明を目的として、効率は落ちるものの、従来のパッチクランプ法と免疫細胞化学染色法を組み合わせた方法での研究も並行して行った。インターニューロンと一次求心性感覚神経の脊髄内中枢側終末とのコンタクトについて、その結合を明らかにした。興奮性インターニューロンの一種であるVertical Cellは、触感覚を伝えるAベータ線維とコンタクトを持っていることを明らかにした。また、抑制性インターニューロン一種であるislet cellのうち、パルブアルブミンを持っている細胞はAベータ線維の終末に対してシナプス前抑制をするようなシナプスを形成していることを明らかにした。これらの結合様式はアロディニアの発症を説明する鍵となる可能性があり、非常に重要である。
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