研究課題/領域番号 |
23659325
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 知保 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70220902)
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キーワード | メチル水銀 / セレン / セレンタンパク質 / 魚食 / 発達神経毒性 / 生物濃縮の拡大 |
研究概要 |
前年度に引き続き,収集した試料における高分子・低分子のセレン化合物の同定・定量を行なった.すなわち,既に水銀と総セレン濃度が測定された試料に対応する血漿試料を用い,HPLC-ICP-MSを用いて分別定量を行った.分別定量については時間・測定装置への負担を考慮し,水銀曝露量について,最高位と最低位の四分位の対象者を選んで測定を行った.ただし,後述する理由によりこの分析は8割かたが終了した状況である. この結果,測定した血清試料においてセレンを含む高分子ピークはクロマト上で3つ確認され,既存の文献情報に基づきアルブミン,グルタチオンペルオキシダーゼ,セレノプロテインPに対応するものと判断された.これら3つのピークの総計を100とした場合の相対的な割合は,それぞれ31, 21, 48% であり,これまで一般集団において知られていることと同様,Se含有量としてはセレノプロテインPが最も多かった.高水銀群と低水銀群との間で,この比率に有意差は認められなかった. 昨年度の検討において,高水銀曝露では血漿中のセレンが高値を示し,水銀濃度とも正の相関を示したが,今回の結果を踏まえると,いずれかのタンパク質が特異的に増加したものではないと考えられる.3つのうちアルブミンのみが,セレン非特異的なタンパク質であることを考えると,こうした結果が得られるのはある程度予想外でもあり,分別測定を完結させるとともに検討すべき事項である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定通りに血漿中セレンの化学形態別分別測定を実施することはできた.しかし,概要に示した通り,分別測定が完結していない.この測定にはHPLC-ICP-MS(高速液体クロマトグラフィーと誘導結合プラズマ質量分析装置をタンデムにつないだシステム)が必須であるが,本年度夏,実サンプルの測定中に故障が起こり測定の中断を余儀なくされた.その後(1)同じ測定機器を利用する(が,測定条件の異なる)試料測定が続き,(2)本システムと隣接する部屋で動物行動実験が開始されたため,本システムを長期間使用できず,測定が完結できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
上記の事情によって,年度内の完結が難しくなったので期間延長を申請した. 主要な目的は分別測定の完結であり,測定終了後,調査地(和歌山県)において報告と今後に向けての協議を行なう予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
分別測定のための消耗品・試薬代が主であるが,調査地を訪問して報告会(セミナー)を開くための旅費・経費として使用する.
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