研究課題
前年度,収集した試料における高分子セレン化合物の同定・定量を行なったが、装置の故障などの理由で分析を終了できず、期間延長し,HPLC-ICP-MSを用いた分別定量を終了した.すなわち、分別定量については時間・測定装置への負担を考慮し,水銀曝露量について,最高位と最低位の四分位にあたる対象者の試料に絞って分析を実施した.これらの結果は、基本的に昨年度までに得られた結果と矛盾しないもので、測定した血清試料においてセレンを含む高分子ピークはアルブミン,グルタチオンペルオキシダーゼ,セレノプロテインPに対応するものと判断された.これら3つのピークの総計を100とした場合の相対的な割合について、高水銀曝露群と低水銀曝露群との間で,顕著な差は認められなかった.しかし、今年度,全試料の分析を終えてさらに詳細な解析を行なったところ、これら2つの群では、血中水銀と血漿中セレンとの関連が異なること,さらには血中水銀と3つのセレンタンパク質との関連も水銀の曝露程度に依存することを見出し,夏の国際学会においてその内容を発表した(業績欄参照).このことは,メチル水銀への曝露が一定のレベルを超えた場合にはじめて,セレン代謝が血漿タンパク質の濃度という可視的なレベルにおいても検出されるような影響を受けることを示唆している.この観察とメチル水銀毒性との関連については明確な結論を得ていないが,対象地域における神経学的症状の欠落にセレンが何らかの役割を果たしている可能性については,発表した論文において言及した..
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Environment International
巻: 68 ページ: 25-32
10.1016/j.envint.2014.03.005