研究課題/領域番号 |
23659327
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
村田 真理子 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10171141)
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研究分担者 |
翠川 薫 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), リサーチアソシエイト (20393366)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | microRNA / Epstein-Barr ウィルス / 上咽頭癌 / DNAメチル化 / バイオマーカー / 炎症 / マイクロアレイ解析 / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
感染症および慢性炎症は全世界の発がん要因の約25%を占めると推定されている。炎症がゲノム・エピゲノムへの異常を誘発し(突然変異や染色体不安定化、DNAメチル化、microRNA等)発がんに寄与する機構が明らかになりつつある(J Biomed Biotechnol, 2012)。感染症炎症関連発がんの分子機構の解明と早期発見の方法の開発は緊急に取り組むべき重要課題である。我々は炎症関連発がんの1つのモデルとして、Epstein-Barrウィルス感染上咽頭癌について検討を行っている。中国広西医科大学付属病院の協力の下、インフォームド・コンセントの得られた上咽頭癌患者および非癌疾患の患者より生検試料を得て、RNAを抽出した。microRNA発現についてマイクロアレイ解析を行い、癌患者と非癌患者で有意に差のあるmicroRNAを検出した。また、正常上咽頭上皮細胞と癌細胞の細胞株とを比較し、microRNAの差異を解析している。がんの早期診断に血中の分泌型microRNAsが利用できる可能性を検討するため、血清中のmicroRNAについても解析を行い、癌組織のmicroRNAを反映し得るバイオマーカー候補について探索中である。また、簡便かつ効率的な血清からのsmall RNAの抽出方法を検討中であり、がんの早期診断ツールとして応用する基盤を構築する。さらに、現在解析中である次世代シークエンサーを用いたDNAメチル化のゲノムワイド解析によりmicroRNAをコードする遺伝子のメチル化とmicroRNA発現低下との関連性を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染・炎症関連発がんにおいて、特にエピゲノム異常が注目されるEpstein-Barr ウィルス感染上咽頭癌について検討を行い、microRNA発現についてマイクロアレイ解析を行っている。併せて遺伝子発現解析およびDNAメチル化について次世代シークエンサーによる解析を行い、現在、相互の関連性を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
Epstein-Barrウィルス感染上咽頭癌についてmicroRNA発現についてマイクロアレイ解析を行い、癌患者と非癌患者で有意に差のあるmicroRNAを検出した。In Silico 解析により得られるmicroRNAの制御遺伝子候補と遺伝子発現マイクロアレイ解析結果を統合し、発がんにおけるmicroRNAの役割を解明する。また、培養細胞にmicroRNAやそのinhibitorを導入し、作用機序・制御機構を明らかにする。上咽頭癌の臨床検体を用いてリアルタイムPCRによる定量を行い、バリデーションを行うとともに癌の早期発見に有用なmicroRNAバッテリーを探索する。血清中microRNAの検出によるスクリーニングが可能かを検討する。炎症関連発がんの他のモデルとして、タイ・コンケーン大学との共同研究により、タイ肝吸虫感染による胆管癌の組織アレイ標本を入手し、In situ hybridizationによりmicroRNAを検出し、他の炎症関連発がんでも応用可能かを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
microRNAの検出ため、RNA抽出試薬、リアルタイムPCR試薬、プラスチック類等の消耗品を購入する。胆管癌の試料の入手のため運搬費、胆管癌における発現を検討するためマイクロアレイ受託解析費、研究成果発表のため旅費を計上する。
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