研究課題/領域番号 |
23659328
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
平工 雄介 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30324510)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 繊維・粒子状物質 / マイクロRNA / 健康障害 / バイオマーカー / リスク評価 |
研究概要 |
石綿やナノ素材などの繊維・粒子状物質は、呼吸器で慢性炎症を介して発がんや線維化を起こしうる。したがって、これらの物質の曝露指標や健康障害リスクの評価指標の確立が急務である。マイクロRNA(miRNA)とは、タンパク質をコードしない22塩基前後のRNAであり、がんなどの様々な疾患に関与すると考えられている。しかし、化学物質のリスク評価にmiRNAを応用する研究はほとんどない。今年度は、繊維・粒子状物質として、ゴム製品やトナーなどに使用されるカーボンブラック、および新規材料として産業現場に使用されつつある多層カーボンナノチューブを対象として、ヒト培養細胞を用いた研究を行った。マクロファージに分化させた単球系細胞(THP-1)および肺胞上皮由来細胞(A549)にこれらの物質を曝露させ、RNAを抽出してmiRNAの発現パターンをマイクロアレイで網羅的に解析した。その結果、これらの物質で処理した細胞において、それぞれ10数種類のmiRNAの発現量が統計学的に有意に変動していることを見いだした。また今年度は、関連した研究成果として、カーボンブラックや多層カーボンナノチューブが、マウスマクロファージ(RAW264.7)およびヒト肺胞上皮由来(A549)の培養細胞に取り込まれ、炎症性反応を惹起してニトロ化DNA損傷をもたらし、発がんに関与する可能性を明らかにした。また、ヒト肺組織における酸化・ニトロ化DNA損傷の強さが角閃石系石綿の量と有意に相関することを明らかにし、曝露指標としての応用可能性を示した。今後は繊維・粒子状物質による発がん・線維化などの疾病におけるmiRNAの機能を解明し、バイオマーカーとしての医学・生物学的意義を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、培養細胞や生体試料からRNAを抽出し、マイクロアレイを用いてmiRNAの発現を網羅的に解析するための実験方法を習得した。さらに、繊維・粒子状物質の曝露により有意に発現量が変動するmiRNAを多数見いだすことが出来た。したがって、ヒトおよび動物の組織におけるmiRNAの発現を解析するための技術的および学問的な基盤は確立されている。さらに次年度は研究を発展させ、miRNAの機能解析を行うとともに、繊維・粒子状物質による健康障害リスク評価に資する指標となるmiRNAの探索を進めていくことが十分可能な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度のマイクロアレイ解析により、繊維・粒子状物質で処理した培養細胞で有意に発現量が変動することを明らかにしたmiRNAについて、リアルタイムPCRによる解析を行い、リスク評価に資するバイオマーカー候補の絞り込みを行う。その上で、国際的データベースおよび文献で当該miRNAの標的遺伝子を探索する。当該miRNAの前駆体あるいはその発現を抑制するオリゴヌクレオチドを培養細胞に導入して、標的遺伝子のうち特に発がん、繊維化、炎症に関わる遺伝子の発現に対する効果を、リアルタイムPCRおよびウェスタンブロッティング法で解析し、miRNAの機能を明らかにする。 また、繊維・粒子状物質を気管内投与した実験動物の肺組織におけるmiRNA発現を網羅的に解析し、培養細胞の結果と比較検討する。さらに、石綿曝露を受けたヒトの肺組織におけるmiRNA発現を解析し、石綿繊維量と統計学的に相関するmiRNAを探索する。またヒトおよび動物の肺組織のパラフィン包埋切片を作成し、探索したmiRNAのプローブを作成してin situ hybridizationを行い、組織中のmiRNA発現の部位と強さについて解析する。さらに免疫組織染色を行い、miRNAの標的遺伝子産物(タンパク)の発現を解析する。上記の研究成果を基盤として、miRNAの発現を指標とした繊維・粒子状物質の曝露評価法およびリスク評価法を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、繊維・粒子状物質で処理した培養細胞と実験動物の肺組織、およびヒト肺組織におけるmiRNA発現の解析を行う予定であり、マイクロアレイ、RNA抽出試薬、リアルタイムPCR関連試薬および関連する実験器具などを使用する。したがって、消耗品費を主たる経費として支出する。設備備品に関しては、本研究で使用する予定の機器が既に申請者の所属する研究機関に設置されているため、新規に購入する予定はない。但し、現有機器の故障などが本研究の遂行における重大な障害となることを防ぐため、機器修理費用を計上する。また国内外で学会発表や共同研究者との打ち合わせを予定しており、必要な旅費を計上する。また、本課題の研究成果を国際誌に発表するための論文投稿料、別刷代金およびカラー写真の印刷代の支出を予定している。
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