研究課題/領域番号 |
23659331
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡崎 利彦 九州大学, 大学病院, 特任准教授 (90529968)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 新規滅菌器機開発 / 核酸分解 |
研究概要 |
平成23年度においては、従来の大型装置の改良を行い、触媒、吸排気系の改良により安定した庫内ガス濃度発生(ガス濃度のモニター)を行うことが達成された。これにより室温での効能評価が可能になり、実用化への大きなベネフィット進捗基盤が整備された。(特許出願予定)掛かるガス発生装置をバイオベクター(Biovector以:以下BVG)として商標登録を行った。二本鎖DNA(genomic DNA, PCR)、一本鎖DNA(cDNA)、RNAを用いてBVGによる核酸分解能の評価を行った。GAPDHをターゲットとする増幅物全長512 base pairs(bp)のPCR増幅産物を分解対象に、Agilent Bioanalyzerにより効能解析を行った。2ul(50ng)のサンプル容量試験では、50℃および45℃では暴露1分後には完全分解を示し、37℃では暴露5分後に完全分解を示した。さらに100ul (1.25ug)のサンプル容量では45℃、50℃とも10分後で完全分解を示したが、37℃では30分後に完全分解効果が得られた。すなわち、BVGの核酸分解能は温度依存性かつ暴露時間依存性である。さらに乾固状態のみならず水溶液中すなわち湿性条件下に置いてもその核酸分解効果が得られることが明らかになった。この結果は、genomic DNAを超音波ホモジナイザーを用いて調整された500~1000bpの二本鎖DNA flagmentの集塊のdsDNAサンプルを用いた検討でも同様の結果が得られ、BVGの二本鎖DNAの分解に及ぼす効能は、幅広い範囲のDNA鎖長にその効能を示すことが明らかとなった。preliminaryながら2ul(200ng)のcDNA並びにRNAサンプル試験では、37℃, 45℃, 50℃いずれの温度条件に於いても15分間の暴露でGAPDHの核酸増幅を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度においては当初の評価項目である核酸(DNA,RNA)に対する基礎的効能評価であったが、この点に関してはRNA並びに1本鎖DNA, 2本鎖DNAともにバイオベクターガスにより完全分解効果が得られることが明らかになり、かつ核酸分解能は温度依存性かつ暴露時間依存性であることが確認出来たことより、順調に予定に沿った進捗状況であり、かつ極めて興味ある実験結果が得られ、機器改良に伴う特許申請も達成出来た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に於いてはこの結果を更に発展させ、実際のアデノウイルスベクターをはじめとする遺伝子治療・再生医療に用いられる種々のウイルス製剤のクリアランス効果、ならびに実臨床での検案課題となっているマイコプラズマ菌や非定型抗酸菌への滅菌効能評価を進めて行きたい。既に我々は改良前のバイオベクターガス発生システムにおいて各種一般細菌に対する殺菌効果の評価を行い、有芽胞桿菌であるB.atrophaeus (ATCC9372)に対する有効な効果を確認しているが、今回改良型のバイオベクターガス発生装置を用いることによって室温(37℃)での効能評価が可能になったことより、工業化応用を視点におき各種標準菌株のBioburdenを実施計画している。更に、セルプロセッシングユニットでの使用備品や内視鏡機器をはじめとする医療現場で使用する機器への応用を試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子治療分野で臨床応用が予定されるアデノウイルスならびにレトロウイルスを用いた実験系のセットアップ、ならびに標準菌株(一般細菌、マイコプラズマ菌、非定型国抗酸菌、他)の購入とその培養系、さらにそれぞれに準拠した評価系(培養、核酸増幅法、抗体反応、バイオアナライザー、他)に要する消耗品購入を使途に計画する。医療機器からのサンプリングに必要な諸経費もその使途に計画する。また得られた成果を有識者との意見交換ならびに情報発信のための学術集会への参加費用をその使途に計画する。
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