研究課題/領域番号 |
23659332
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
高宮 考悟 宮崎大学, 医学部, 教授 (40283767)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ヒ素 / 高次脳機能 / シナプス可塑性 |
研究概要 |
ヒ素は、アジア各国において飲料水中に多量に含有されており、これを摂取せざるを得ない住民達における慢性ヒ素中毒は、今後日本を含む、世界規模で発生してくる大規模な中毒問題となることが危惧されている。本研究において、ヒ素の神経機能への影響を医学・生物学的観点より検 討し、基礎的データを集めることにより、現在注目されていないヒ素の中枢神経機能への影響を明らかとすることを目的とする。当該年度においては、培養神経細胞を用いてその培養液中へ、数種類の有機ならびに無機ヒ素を添加して経時的に細胞表面に存在するAMPA型グルタミン酸受容体の総量の変化をビオチン化アッセイによって定量した。現在までに、数種類のヒ素により、細胞表面のAMPA型グルタミン酸受容体の量が減少することが確認され、それは添加するヒ素に容量依存的であった。またこれらヒ素に対する反応性は、神経細胞の成熟度に関連していることもわかった。神経細胞の染色でもシナプスのマーカーとの二重染色により、細胞培養液に添加したヒ素によりシナプスに存在するAMPA型グルタミン酸受容体の数の減少が確認された。さらにこれらAMPA型グルタミン酸受容体の細胞内への移行は、受容体のリン酸化が深く関係することがわかった。今後、ヒ素によるAMPA型グルタミン酸受容体の細胞内への移行のメカニズムに関して詳細に検討していく予定である。またヒ素のシナプス可塑性への影響を、急性脳スライスを用いた電気生理学的実験により現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒ素によるAMPA型グルタミン酸受容体への影響は、非常に大きく、その細胞内への移行に関しては、明らかで再現性が高い。その他の概要神経細胞を用いた細胞生物学的実験においてもシナプスにおける受容体のヒ素刺激による減少は明らかであり、電気生理学的検討を待たずして、シナプスにおける受容体数の減少が明らかとなっている。上記のような結果は、実験当初にたてた仮説と一致する結果であり、当初の実験計画にそって順調に進んでいると考える。さらにそのメカニズムに関しては、リン酸化が関与しているという明らかな糸口をみつけてはいるものの、さらに次年度で詳細な解析が必要であろう。以上のことより、本研究は、当初の実験計画にもとづいて、計画どおり、もしくは、それ以上に現在進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒ素による受容体の細胞内移行の詳細なメカニズム、電気生理学的検討によるシナプス可塑性に対する影響を観察する。現在までの結果とこれまでの報告から、ヒ素投与によるシナプス可塑性への影響は、大方の予想ができるため、早期より論文作製にとりかかる予定である。当初、ラットを用いたヒ素による行動学的検討を行う予定であったが、動物の飲料水にヒ素を混入して使用した際、そのし尿などの廃棄・管理の面から動物施設への負担が大きく、当大学の動物施設の改修工事と重なるために、動物の行動実験は、共同研究として他の施設と行っていくことを現在検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
すべての研究費を、細胞培養や免疫学的実験、電気生理学的実験における消耗品に使用する予定である。
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