研究概要 |
報告者は、当該研究期間以前の平成23年度までに、HuNoV 104株(GII/4)の人工ウイルス空粒子(VLP、組換えバキュロウイルス発現系で作製)を抗原に用い、3つのヒト由来ファージ抗体ライブラリーから、交叉反応性抗体を含む多数の抗HuNoV抗体の単離に成功していた。そして、当該研究期間に、①より多種類のgenogroup/genotypeのVLPを用い、交叉反応性を詳細に調べる、②それら抗体が認識するウイルス粒子上の抗原エピトープを同定する、③他のウイルス株でもスクリーニングを行い、抗HuNoV抗体のレパートリーを増やし、各々の抗原エピトープを同定して、抗原性および交叉反応性の高いウイルス構造タンパク質上のアミノ酸配列を決定する、④単離された抗体が実際にヒトの生体内でHuNoV感染防御を担っているかを、健常人血清サンプルとの結合阻害実験で確認する、⑤単離された抗体と、HuNoVレセプターの候補分子である組織-血液型抗原(HBGA)との吸着競合実験を行い、中和抗体の可能性を探る、の5課題の解明を目指した。そして、1)単離された抗体のうち4クローンが交差反応性抗体であること(上記課題①と③の研究結果)、2)上記1)で述べた4つの交差反応性抗体には、homotypic VLPのHBGAへの吸着阻害活性がある、すなわち、中和抗体の可能性があること(上記課題⑤の研究結果)、を明らかにし、報告した(Higo-Moriguchi et al., J. Med. Virol., 86:558-567, 2014)。そして予備データではあるが、3)上記6抗体と同じタイプ(同じエピトープを認識すると考えられる)抗体が、10-80歳代の健常人血清の中に含まれている可能性が高い(上記課題④の研究結果)とのデータを得つつある。しかし、②や③で計画した、抗原エピトープの同定には至らなかった。
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