研究課題/領域番号 |
23659340
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研究機関 | 国立水俣病総合研究センター |
研究代表者 |
山元 恵 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 室長 (70344421)
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キーワード | メチル水銀 / 糖尿病マウス / 神経毒性 |
研究概要 |
メチル水銀曝露に対する感受性において、糖尿病の罹患が及ぼす影響を明らかにすることを目的として、健常マウス(C57BL/6J: BL/6)と2型糖尿病マウス(KK-Ay)におけるメチル水銀の毒性発現について比較検討を行っている。今年度は、昨年度に確立したメチル水銀の投与条件下(5 mg Hg/kg/day。週3回。約6週間)において、雄の4週齢マウスにメチル水銀を投与し、下記の知見を得た。①実験開始時におけるBL/6マウスとKK-Ayマウスのコントロール群の平均体重は、ほぼ同様であり(BL/6 : 16.3 g, KK-Ay : 16.4 g)、実験終了時のKK-Ayマウスの平均体重(42.3 g) は、BL/6の1.7倍 (24.8 g) であった。メチル水銀投与群のKK-Ayマウスは、投与開始後、約5週目より体重減少が観察され、実験終了時の平均体重は、28.7±2.4 gであった。②メチル水銀投与群のKK-Ayマウスは、実験終了時に、7匹中6匹が後肢交叉等の神経症状を示した。一方、BL/6マウスにおいては、いずれの個体にも神経症状は見られなかった。③メチル水銀投与開始後、KK-Ayマウスの血中総水銀の平均値は9.8 ppmに達したが、BL/6マウスの血中総水銀の平均値は、投与開始後、10日目以降2.8 ppmであった。④ KK-Ayマウスの大脳と精巣上体脂肪組織における総水銀平均値は、各々27 ppm、1.6 ppmであり、BL/6マウスにおける値は、各々7.4 ppm、0.6 ppmであった。以上の結果は、体重あたり等容量のメチル水銀に曝露すると、2型糖尿病における脂肪量の増加、および脂肪組織における水銀の低蓄積性に伴って、各組織におけるメチル水銀濃度が高くなり、結果として毒性発現が増強されることを示すものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体重あたり等容量のメチル水銀に曝露すると、2型糖尿病における脂肪量の増加、および脂肪組織における水銀の低蓄積性に伴って、各組織におけるメチル水銀濃度が高くなり、結果として毒性発現が増強されるという新規な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに得られた結果を論文として投稿中である。査読者から要求される追加実験やコメント対応を行い、論文受理に結び付ける。現在、研究計画に記載してある次の段階の実験(糖尿病の発症段階の異なるマウスにおける毒性発現の検討)を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種実験に用いる費用および、研究協力者の招聘費用(マウスの解剖と試料の処理を行うため)に使用する予定である。現在検討中の試験(糖尿病の発症段階の異なるマウスにおける毒性発現の検討)においては、通常の実験において必要な試料の解析費用(病理、生化学的解析等)に加え、これまで未検討の新たな行動試験やデータ解析に伴う予算が必要であるため、繰り越し金を充てる予定である。
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