研究課題
水銀化合物の曝露に対するハイリスクグループとして、高濃度水銀に曝露している人々、および水銀に対して高い感受性を持つ人々があげられる。疾患等のリスク要因をもつ人々のメチル水銀への感受性は、健常者と異なることが想定され、特にメチル水銀の標的部位である神経系等に関連する疾患を持つ人々は、ハイリスクグループである可能性が指摘されている。糖尿病は、現在、世界の成人人口の約5~6%が罹患しており、若年層にも罹患者が広がりつつある重要な公衆衛生学的問題の一つである。糖尿病は、血糖の調節機構の破綻様式により、大きく1型と2型に分けられる。我が国の糖尿病罹患者の90%以上が、生活習慣と関連性の高い2型である。本研究においては、2型糖尿病に伴う代謝変化が、メチル水銀の生体内動態や毒性発現に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、正常マウス (BL/6) と2型糖尿病マウス (KK-Ay) に、体重当たり等容量のメチル水銀を曝露し、影響を比較した。その結果、2型糖尿病マウスにおいて、歩行障害などの神経症状や脳病変が、著しく早期に出現することが判明した。その原因として、正常マウスに比べ、2型糖尿病マウスは高い体脂肪率を示すが、メチル水銀は脂肪への蓄積性が低いために、相対的な血中の水銀濃度が上昇し、結果として各組織への水銀移行が亢進したことが一因であることを明らかにした。これらの結果は、従来、体重当たりの曝露量で評価されているメチル水銀のリスク管理について、体脂肪率などの体組成をも考慮する必要があることを示唆する知見であると考えられる。
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Journal of Applied Toxicology
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10.1002/jat.2954
http://www.nimd.go.jp/kenkyu/docs/yamamoto20140100.pdf