研究課題/領域番号 |
23659341
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岸 玲子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任教授 (80112449)
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研究分担者 |
安住 薫 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (90221720)
池野 多美子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任講師 (80569715)
吉岡 英治 北海道大学・大学院, 医学研究科, 助教 (70435957)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 注意欠損・多動性障害(ADHD) / 環境要因 / エピジェネティクス / 喫煙 / 葉酸 / 環境遺伝交互作用 |
研究概要 |
本研究では大規模出生コホートに参加している8才児に対し、国際的に使用されているConners日本語版(ADHD関連症状調査票)とADHD-RS、現在の生活環境などについて質問票調査を行い、環境因子のリスクを明らかにする。さらにコホート内症例対照研究を設定し、DAT1、DRD4ほかADHDリスク遺伝子多型とメチル化部位の測定を行う。これによりDNAメチル化を介したADHDの環境(喫煙)遺伝子多型交互作用を考慮したメカニズムを明らかにすることを目的としている。今年度の実績は次の通りである。(1)調査票による環境・交絡要因評価の準備:大規模出生コホート(平成23年12月31日現在、20,443名登録)に参加登録し、平成24年度8歳に達する児2,334名の養育者を対象に実施する調査票を作成した。調査票はConners日本語版、ADHD-RSのほか生活環境要因と交絡要因の情報収集のため、児の健康状態、治療中疾患の有無、睡眠時間、遊びのようす、メディア接触時間、養育環境、両親の喫煙状況、食事、経済状態、ストレス状態、ライフイベントについての項目を入れて作成した。予備調査(10名)により回答状況を確認し印刷した。(2)(1)により得られる環境要因、交絡要因と、既に実施した胎児期のベースライン調査(出生体重、飲酒)および喫煙曝露指標(コチニン濃度)、葉酸濃度のデータを連結し、環境要因がADHD発症に及ぼすリスクの大きさを評価する。曝露物質測定として、コチニン値は妊娠後期母体血で15,386名、葉酸値は妊娠初期母体血で18,846名分の測定を終了している。(3)ADHD発症に関する環境要因(環境化学物質、養育環境、生活環境など)と遺伝要因、さらに環境遺伝交互作用について詳細な文献レビューを行い、論文投稿並びに学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
調査票印刷、喫煙曝露評価(コチニン値測定15,386名)と葉酸値測定(18,846名分)が終了している。ADHDについては、免疫アレルギー調査を行う7歳時に行わず、8歳時に独立して調査を実施する。遺伝子解析のための設備セットアップも完了し、平成24年度に調査票発送と同時に、コホート内症例対照研究で遺伝環境交互作用を検討する準備を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
1)8歳時調査票による調査:児が8歳に到達すると順次調査票を送付し(総数2,334名分予定)、調査票によるADHD発症の環境要因評価を行う。2)ADHDが疑われる児の確定診断:ADHD症例群で疾患が疑われた場合は、希望者に対して小児科または精神科医師による面接を行い、ADHDの確定診断および他精神疾患との鑑別を行って、必要な場合医療機関での早期介入に繋げる。3) Conners日本語版調査票およびADHD-RSの信頼性の検討:児のConners日本語版およびADHD-RSの得点を用い、信頼性の検討を行う。Conners日本語版の得点上位5%をADHD疑い群とし、年齢・性別をマッチさせた対照群、各50名について設定するコホート内症例対照研究では、CBCLを養育者に実施し、Conners日本語版、ADHD-RS、CBCLの3つの評価尺度により信頼性を検討する。4)エピジェネティクスを含む環境遺伝交互作用の解明:コホート内症例対照研究で、凍結保存された臍帯血を用いて、パイロシーケンサー(キアゲン社)でADHDの候補遺伝子(COMT、 DRD1/2/3/4/5TH、MAOAなどの単塩基多型およびDAT1、DRD4のコピー数多型)および異物代謝酵素など喫煙に関連する遺伝子(CYP1A1、 CYP1B1、 AhR、 AhRR、 EPHX1、 NAT2など) の多型・ハプロタイプと、それらの遺伝子のメチル化部位の変異を解析し、喫煙との交互作用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度3月に納品等になった場合でも、平成24年4月に支払いが発生するため、残高として記入した。なお、平成23年度研究費として実施状況報告書に記載している残高292,751円の内訳は、次の通りである。遺伝子実験用試薬・器具として、試料貯蔵ボックス 110,250円、北海道バイオシステムフィンピペット 92,610円、2ml凍結保存チューブ 59,220円、調査案内文印刷としてコピー用紙A4 10,920円、文具消耗品等としてビジネスバッグ他 19,751円となっている。
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