研究課題/領域番号 |
23659342
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
下山 克 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (50312492)
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研究分担者 |
中路 重之 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10192220)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / 血清脂質 / 除菌 / 動脈硬化 |
研究概要 |
本年度はヘリコバクター・ピロリ感染が血清脂質濃度に及ぼす影響について検討をおこなった。従来の検討では長期間のヘリコバクター・ピロリ感染によって生じる胃粘膜の萎縮について検討が行われていない。中高年者になって胃粘膜萎縮が高度になると胃酸を産生する胃粘膜の腺管上皮細胞が減少するため脂質の吸収に影響する可能性がある。そこで、一般住民健診を受診した中高年者において、血清総コレステロール(以下TC)値、中性脂肪(以下TG)値、body mass index (BMI)について、ヘリコバクター・ピロリ感染の有無だけでなく血清ペプシノーゲン濃度から判断した胃粘膜萎縮の程度を加えて、それらの影響について検討した。その結果、高齢者になると胃粘膜萎縮が高度の場合と軽度の場合で血清脂質濃度に違いを認めた。すなわち萎縮が高度になると血清TC, TG値が低い傾向にあった。ヘリコバクター・ピロリ感染と血清脂質の関連を調べる場合には胃粘膜萎縮の程度の影響も考える必要があることが示された。しかしながら、それらの違いはBMIに影響するものではなかった。今回の検討結果から考えると、ヘリコバクター・ピロリ感染を除菌せずに長期間持続させることにより高齢者の高脂血症が起こりにくくなる可能性はあるものの、胃癌をはじめとする他の重篤な疾患の発生を考えれば、ヘリコバクター・ピロリ感染を除菌した上で、過食・運動不足を避けるなど生活上の指導を行うことが生活習慣病を予防するための正しい方法と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響により、予定していた一般住民健診への参加ができなかったため、研究のための資料は計画していたほど集めることができなかった。しかしながら、これまで蓄積されていた成績を中心に検討を行って喫煙者において、ピロリ菌の除菌を行っていくと動脈硬化の進展が緩序になる可能性、胃粘膜萎縮が血清脂質濃度に関連している可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、東日本大震災の影響により、昨年参加できなかった一般住民健診へ参加し、ピロリ菌感染の有無、血清ペプシノーゲン濃度、血清脂質濃度、脈波伝達速度の測定を行う。この住民健診には7年前、3年前にも参加して同様の項目について測定しているので、今回の結果と比較することによりピロリ菌感染とその除菌が血清脂質濃度、動脈硬化に及ぼす影響について長期的な観察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ピロリ菌感染診断については血清抗体と便中抗原の測定を行う。便中抗原の測定のための専用の採便容器を購入し、当科の実験室にマイクロプレートリーダーを購入、設置してピロリ菌抗原の測定を行う。血清抗ピロリ菌抗体価と血清ペプシノーゲン濃度については外部業者に測定を依頼する。結果についてはAmerican College of Gastroenterology annual meetingもしくはAsia-Pacific Digestive Weekにおいて公表する。
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