研究課題/領域番号 |
23659342
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
下山 克 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50312492)
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研究分担者 |
中路 重之 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10192220)
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キーワード | H. pylori / PWV / 胃粘膜萎縮 / 生活習慣病 |
研究概要 |
弘前大学大学院医学研究科と弘前市が共同で行っている2012年度岩木健康増進プロジェクト検診に参加し、1000名を超える受診者についてデータを得た。これらの受診者の半数以上が2005年度に同様の健診を受診していた。 ヘリコバクターピロリ感染については便中ピロリ菌抗原と血清抗体を測定した。胃粘膜の萎縮の程度を評価するために血清ペプシノーゲン濃度を測定、さらに血清ガストリン濃度も測定した。心・血管疾患のリスク因子としてはコレステロール濃度を測定し、PWV, ABIを測定した。 問診により、喫煙状況・ピロリ菌除菌歴・PPI内服状況についても確認し、除菌治療の動脈硬化への影響を中心に検討したところ、男性喫煙者においてピロリ菌感染があることが動脈硬化の促進因子である可能性が示唆された。 さらに、骨減少症、歯牙酸蝕など他の生活習慣病とピロリ菌感染の影響についても検討を行った。その結果、ピロリ菌感染があることは、男性において胃酸分泌の低下を生じさせ残存歯数を多くしている可能性が示された。しかし、酸と関連があるとされるカルシウム代謝・骨量に関してはピロリ菌の影響は明らかにできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に岩木健康増進プロジェクト検診に参加して、ヘリコバクターピロリ感染について便中ピロリ菌抗原と血清抗体を測定し、胃粘膜の萎縮の程度を評価するために血清ペプシノーゲン濃度を測定、心・血管疾患のリスク因子としてはコレステロール濃度を測定し、PWV, ABIを測定する予定を立てていたが、東日本大震災の影響で予算が間に合わず、2年目の2012年度に測定を行うことができた。繰り越した金額があったために、当初予定していなかった血清ガストリン濃度も測定することができたので、胃がん検診など他の分野にも生かせる結果を得ることができたと考えている。 除菌治療の動脈硬化への影響を中心に検討したところ、男性喫煙者においてピロリ菌感染があることが動脈硬化の促進因子である可能性が示唆されているので、さらに証左に検討して公表したいと思う。過去に行われている研究では最長でも4年程度の経過観察であるため、興味深い結果が得られることを期待している。 さらに、骨減少症、歯牙酸蝕など他の生活習慣病とピロリ菌感染の影響についても検討することができ、ピロリ菌感染がある男性においては胃酸分泌の低下を生じさせ残存歯数を多くしている可能性が示されたので、論文を投稿中である。酸と関連があるとされるカルシウム代謝・骨量に関してはピロリ菌の影響は明らかにできなかったが、胃粘膜萎縮も絡めて再検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
岩木健康増進プロジェクト検診に参加して、予定していたヘリコバクターピロリ感染についての便中ピロリ菌抗原と血清抗体を測定、胃粘膜の萎縮の程度を評価するための血清ペプシノーゲン濃度の測定、心・血管疾患のリスク因子としてのコレステロール濃度測定とPWV, ABIを測定することができた。さらにレプチン、ガストリンといったホルモンの測定結果も使用することが可能となったので、今年度はデータの解析と学会発表・論文公表を中心として研究を推進する。とくに、ピロリ菌感染を放置している者と除菌治療を受けた者の2005年からの変化のちがいについて注目している。 さらに、胃粘膜萎縮について検討している結果を、青森県における胃がんリスク検診のあり方を研究する会で公表し、よりよい検診の確立に貢献したいと思う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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