弘前大学大学院医学研究科と弘前市が共同で行っている岩木健康増進プロジェクトの2012年度の健診に参加して、1000名を超える受診者について得られたデータから、引き続き種々の生活習慣病とヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染の関連について検討を行った。 前年までの検討は、ピロリ菌感染の有無を調べるために測定した便中ピロリ菌抗原と血清抗ピロリ菌抗体価、胃粘膜の萎縮の程度を評価するために測定した血清ペプシノーゲン濃度、心・血管疾患のリスク因子として測定した血清コレステロール濃度を検討に使用してきた。本年度はさらに実際の栄養素の摂取状況も検討することとし、タンパク質、脂質の摂取状況を、簡易型自記式食事歴法質問票を使用して算出した結果も検討の材料とした。動脈硬化のリスクの観点からはコレステロール摂取、塩分摂取に注目したが、ピロリ菌感染とその除菌と、これらの栄養素の摂取については明らかな関連を見出すことができなかった。一方、タンパク質の摂取についてはピロリ菌感染者で低い傾向にあり、ピロリ菌感染者においてはペプシノーゲン値から判断すると、酸分泌能が低下することと胃粘膜の炎症が強い場合にタンパク質摂取が低下することが示唆された。非感染者においてはそのような違いは認められなかった。 また、従来、胃粘膜の健康の指標としてペプシノーゲン濃度について、ピロリ菌感染者と未感染者での年代毎の値についても検討した。その結果、現行のペプシノーゲン濃度で胃がんリスク分類に使用するカットオフ値が感染者においてのみ有効であり、未感染者ではカットオフの設定を見直す必要があることを発表した。
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