研究課題/領域番号 |
23659346
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
八谷 寛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324437)
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研究分担者 |
玉腰 浩司 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30262900)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生活習慣 / 構造方程式モデリング / 行動変容 / 介入 / 国際情報交流 / アメリカ |
研究概要 |
我々は、様々な生活習慣を同時に保有している。しかし、生活習慣同士の関連や、それらの生活習慣病の有病や発症に対する同時影響については、十分研究されていない。本研究は、生活習慣間、さらにそれらと心理社会的要因との間の関連性を明らかにし、生活習慣病予防のための介入研究に応用することを最終目標としている。本研究で我々は、介入対象としての適切性からアメリカ心臓協会によって発表された理想的な生活習慣(Circulation 2010;121:586-613.)に着目した。すなわち、(1) 非喫煙、(2) 定常的な身体活動、(3) 塩分、野菜・果物、食物繊維の豊富な全粒穀物、加糖清涼飲料水の摂取の5項目から判断する食事・栄養素摂取、そして(4) 肥満度の4つの生活習慣について、下記の分析を実施した。今年度は特に食事・栄養素摂取について、それら5項目の集積の実態、集積状況と健診成績の横断的関連、そして6年後の糖尿病発症との関連についてコホート分析を行った。また、食事・栄養素摂取に関する変数間の相互関連構造についての分析は、構造化方程式モデリングの手法を用いた分析を開始した。その結果、食事・栄養素摂取の状況が悪い者では、身体活動を実施する者の割合が低く、喫煙習慣を有する者が多いことが明らかになった。また、理想的な食事・栄養素摂取の項目数が多い者ほど、肥満度、拡張期血圧、総コレステロール、中性脂肪値が低く、HDLコレステロール値が高いこと、さらに、肥満度の差異ならびに喫煙や身体活動と言った食事・栄養素摂取以外の生活習慣に独立して将来の糖尿病発症率の低下に関連することを示し学会で発表した。項目別では糖尿病発症リスクと関連しなかったような項目も保有個数としてまとめると糖尿病発症リスクの低下と有意に関連した結果は、複数の生活習慣の集積によって測定される高位の因子の存在を示唆するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、生活習慣要因相互の関連を統計学的に分析すること、さらに生活習慣集積状況と健診成績との横断解析や生活習慣病発症とのコホート解析を実施することを計画した。実績の概要で述べたように、本研究では、介入計画作成を視座に含めていることからアメリカ心臓協会が提唱する理想的な生活習慣に着目し、特に今年度は、食事・栄養素摂取状況の集積について分析を実施した。その結果、食事・栄養素摂取の状況が悪い者では、低身体活動、現喫煙など、食事以外の悪い生活習慣も集積する傾向にあることを示したり、理想的な食事・栄養素摂取の項目数が多い者ほど、肥満度をはじめとする健診成績が良好であること、さらに、肥満度の差異ならびに現喫煙や低身体活動に独立して将来の糖尿病発症率の低下に関連することを示すなど、年度初の解析計画は概ね達成されていると考えられた。項目別では関連しなかったような項目も、保有個数としてまとめると糖尿病発症リスクの低下と有意に関連した結果は、研究仮説である「複数の生活習慣の集積によって測定される高位の因子の存在」を示唆するものであり、構造方程式モデリングを用いてた分析をさらに進めて、生活習慣集積の原因、疾患発症へのパスを明らかにすることの意義が再認識された。介入計画の作成に当たっては、肥満に対する生活習慣介入研究に実績のある米国研究者との情報交流を継続して実施してきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究成果をもとに、複数の生活習慣の集積によって測定される高位の潜在的要因を統計学的な方法を用いて明らかにし、さらに、そうした要因に着目した生活習慣変容介入の実施計画を立てる。前者に関して、勤務関連要因や心理社会的要因を含む多数の変数について探索的に分析することとしており、統計解析方法としては構造方程式モデリングを用いる。研究分担者、研究補助者は本法に熟達しつつある。後者の介入計画の作成にあたっては、米国の研究協力者が実施する肥満の長期減量維持を企図した介入研究や肥満2型糖尿病に対する生活習慣介入による心血管疾患発症率の低下を調べる介入研究の具体的かつ詳細な内容について情報提供を受けるとともに、本計画について情報交換を行うこととしている。 介入計画は、Multiple Health Behavior Intervention の理論に基づき、対象者の行動変容のしやすさやアドヒアランス、心理的負担感をも二次的エンドポイントとして評価するものとする。さらに、こうした介入研究の実施が可能な人的体制についても整えることとする。介入計画を含む成果は、国際学会(米国)で発表を計画する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究補助者として雇用する者の人件費、米国の研究協力者との情報交流に要する費用、介入計画を含む研究成果を国際学会(米国)で発表するための旅費を計上している。解析結果はプリントアウトして検討するため、プリンタートナー、プリントアウトする紙代も経費に含めている。
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