研究概要 |
最終年度である今年度は、某健康保険組合の保有する2005年1月1日から2011年6月30日の間のレセプトデータ等に基づいて妊婦を同定し、妊娠中の高血圧症関連の診断名(ICD-10中分類:O10-O16)の有無に関わらず、妊娠期間(レセプト傷病名欄に記載された妊娠週数および診療開始日より推定)における降圧薬処方状況を評価した。2005年1月1日から2011年6月30日までの約90万名分のレセプトデータより、約35,000名の児の保険資格取得が同定され、最終的に妊婦19,282名(平均年齢31歳)を同定した。 妊娠期間に一度でも降圧薬を処方されたことのある妊婦は744名であり、妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期に一度でも降圧薬を処方されたことのある妊婦はそれぞれ、40名、76名、673名であった。また、妊娠期間を通して、最も多くの妊婦に処方されていた降圧薬は‘フロセミド’(328名)であり、妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期に最も多くの妊婦に処方されていた医薬品はそれぞれ、‘メチルドパ’(13名)、 ‘メチルドパ’(25名)、‘フロセミド’(299名)であった。昨年度に実施した研究結果と今年度の結果を総合的に評価すると、妊娠中の高血圧関連の診断名を有する対象者を抽出することは、レセプトデータに基づいて妊婦を同定する方法としては有用であるが、妊娠中の降圧薬処方状況評価を目的とした場合には、処方状況を過小評価する可能性が示された。 本研究の結果、レセプトデータに基づいて妊婦に対する降圧薬処方状況を評価する場合、妊娠中の高血圧に関連する診断名の有無に関わらず評価の対象とする必要性が示唆された。今後、高血圧の診断名の有無別の分析など、さらに解析を進め、研究成果公表・関連学会の推奨等を通じ医療現場へ還元していきたいと考えている。
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