こころとがんの発生およびがん死亡との関連性を明らかにするために、当該年度は大規模コホートJACC-Studyのデータ利用が承認され、全国25施設約12万件のうち、約6万件の20年間追跡の大量データについて解析した。初年度の日南コホートデータベース構築によるパイロットスタディーの成果と問題点を考慮して、解析対象は、調査開始時年齢が40歳~79歳で、がんの既往者、追跡3年未満の死亡者および5年未満のがん罹患者は除外した。解析方法はCox比例ハザードモデルを適用し、性、年齢、喫煙習慣、飲酒習慣および肥満度を調整しがんの罹患・死亡への影響を検討した。 その結果、生き甲斐やストレスおよび生活満足度などの生活状態が、がんの発生や死亡に有意な関係は認められなかった。傾向として、調査開始時における生きがい、ストレスなどの社会心理的な生活態度が関与している、という結果を認めた。しかし、内容的には交絡因子で調整してもストレスが少ないほどがん罹患や死亡が高くなる傾向や仕事はいつも性急にする者が逆にがん罹患・死亡割合が低くなる傾向を認めた。生きがいについても、ある者が、ない者に比べてがんの罹患・死亡リスクが高くなる傾向を認めた。他方、がんとは対照的に、循環器疾患の既往を除外したリスク解析では、こうした社会心理的な生活態度が循環器疾患の罹患や死亡リスクに有意に関与している、という逆の結果を得ている。既に、生きがいについては、生存解析から、とくに多い者が生存率が有意に高くなることを報告している。また、食品摂取パターンのうち、「乳製品型」の摂取が多いと消化器関連がんの罹患および死亡のリスクが減少する傾向が認められたことも報告している。 文献的にも全死亡、脳血管疾患および心疾患との有意な関連性について散見されるが、本研究結果からは「こころとがんの関連性」についての明確な結論は得られなかった、といえる。
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