欧米諸国に比べてわが国では予防対応が大きく出遅れたアスベスト問題や近年の食品危機管理問題を端緒として、既知で未解決の健康リスク、新たに発生しつつある健康リスク、さらに将来の潜在的な健康リスクに対し、先見的に情報を収集・整理し、迅速に当該領域の研究の推進および社会への情報発信、行政等への政策提言につなげることの重要性が指摘されている。本研究では日本公衆衛生学会での委員会取り組みにおいて、特に学会HPを活用したモニタリング・レポートシステムの確立と試行による経験の蓄積、さらに関連する国内列の情報収集・分析から、わが国における行政機関を含めたシステムのあり方を示すことを目的とした。 これまでに検討中の課題には、自殺対策、行政統計リンケージ、こどもの健康格差、食品危機管理、非正規雇用、青少年の危険行動要因、医療、環境発癌物質などがあり、委員会レポートとして学会機関誌および学会HPに公表した。特に、東日本大震災と福島原発事故放射線問題に関する委員会レポートには、公衆衛生学会HPを通じて学会員から意見が寄せられ、委員会との意見交換の機会を持つことができた。これらについては委員会レポートとして一冊に纏めて公表した。また、本領域で特に進んだ経験を有する米国CDC(アトランタ)を2名の委員等が訪問し情報を収集した。その成果は、2012年10月に山口市において開催される日本公衆衛生学会において報告・討議が予定されており、健康リスクへの先見的対応は本総会のメインテーマとなっている。以上の取り組みの中で、学会HPを介する学会員からの情報収集についてはまだ課題が残った。
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