研究概要 |
本研究は,有害化学物質の曝露指標として,DNAの塩基配列の変異によらない遺伝情報(エピジェネティクス)の1つであるDNAメチル化検出が有用であるかを検討した。また,網羅的にゲノムDNAのメチル化を検出するために散在性の反復配列を標的遺伝子とした。 有害化学物質によるゲノムDNAのメチル化を調べるため,有害物質として重金属のカドミウムをラットに長期間経口投与し,肝臓のゲノムDNAのメチル化を検出し、CdによるDNAメチル化の割合を調べた。標的遺伝子はラットゲノムの反復配列であるIdentifier elements (ID配列)を用いた。DNAメチル化検出はメチル化感受性制限酵素を用い、real-timePCR法で解析した。CdによりDNAメチル化の割合が高くなった。この結果はCdによってゲノムDNAがメチル化される可能性が示された。 次に, DNAメチル化検出が化学物質曝露評価の遺伝子検査として有用であるかを調べるため,ヒトの反復配列であるAlu配列のメチル化を検出し、更に血液中の重金属(Cd,Pb,Hg)を測定し、DNAメチル化の割合と血中重金属濃度とを比較・検討した。また,Cdは骨代謝に影響を与えるため,骨密度と比較・検討した。DNAメチル化検出はメチル化配列特異的なプライマーを用いreal-timePCR法で解析した。DNAメチル化の割合と血中重金属濃度(Cd,Pb,Hg)と相関は認められなかったが,骨密度と相関が見られ,Alu配列のメチル化は骨代謝の指標の1つとして検討される。
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