研究課題/領域番号 |
23659360
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
佐野 浩斎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20408404)
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キーワード | 地域調査 / 疫学 / 高齢者 / 網膜病変 / 境界型糖尿病 / 生活習慣病 |
研究概要 |
本年度は、726名(63.7±9.2歳)男性430名/女性296名を対象に中間解析を施行した。65歳以上の高齢者は374名(71.0±4.8歳)男性211名/女性163名であった。65歳未満は352名(56.0±5.8歳)男性219名/女性133名であった。 高血圧性眼底、糖尿病網膜症、白内障、緑内障、眼底出血を高血圧、糖尿病、脂質異常症などに関連する生活習慣病関連眼疾患、網膜血管硬化症、高血圧性眼底、硬性白斑、黄斑変性、網膜白斑、網膜上膜、黄斑円孔、ドルーゼン、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症を網膜関連疾患とし、HbA1c値(JDS値)5.2-6.4%の群を早期の糖代謝異常群、HbA1c値(JDS値)5.1%以下の群を正常群とし、検討した。 眼底所見は数の多い順に、65歳以上では、視神経乳頭陥凹52症例、白内障21症例、網膜白斑14症例、眼底出血10例、黄斑変性9例、網膜上膜9例、高血圧性眼底6例、網膜血管硬化症5例、65歳未満では、視神経乳頭陥凹60症例、黄斑変性7例、高血圧性眼底7例であった。 生活習慣病関連疾患は、65歳以上で、糖代謝正常群3例、早期糖代謝異常群33例に認められ、65歳未満で、糖代謝正常群5例、早期糖代謝異常群11例に認められた。生活習慣病関連疾患は、65歳以上では、早期の糖代謝異常群で多く認められる傾向(P=0.089)を示した。網膜関連疾患は、65歳以上で、糖代謝正常群11例、早期糖代謝異常群35例に認められ、65歳未満で、糖代謝正常群10例、早期糖代謝異常群12例に認められた。網膜関連疾患も、65歳以上では、早期の糖代謝異常群で多く認められる傾向(P=0.072)を示した。中間解析からは、糖代謝異常の進行は早期から高齢者の眼に影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象者の情報として、BMI値などの身体所見、糖代謝指標としてHbA1c値(JDS値)、早朝空腹時インスリン値(μU/mL)×早朝空腹時血糖値(mg/dL) /405により求められたインスリン抵抗性をあらわすHOMA-IR値、早朝空腹時インスリン値 (μU/mL)×360/早朝空腹時血糖値 (mg/dL) -63にて求められたインスリン分泌状態を表すHOMA-β値、収縮期および拡張期血圧値、LDL-コレステロール値、HDL-コレステロール値、中性脂肪値、肝機能や腎機能に関する値、眼底検査により得られた眼底所見などが、データベースに集積された。具体的に集積された眼底所見は、視神経乳頭陥凹、白内障、網膜白斑、黄斑変性、眼底出血、網膜上膜、高血圧性眼底、網膜血管硬化症、緑内障、網膜静脈閉塞症、硬性白斑、糖尿病網膜症、黄斑円孔、硝子体混濁、ドルーゼンなどであった。測定可能な対象者では、尿中アルブミン排泄量や75g経口ブドウ糖負荷試験の結果が収集された。データベースをスクリーニングしたところ、収集予定項目の90%以上の情報を得られた対象者は1231名(年齢66.2±10.1歳(AV±SD))男性712名(65.9±10.1歳)/女性519名(66.7±10.1歳)であった。年齢別では、65歳以上の高齢者は706名(73.4±5.6歳)男性396名(73.3±5.7歳)/女性310名(73.5±5.4歳)、65歳未満の対象者は525名(56.6±5.9歳)男性316名(56.7±5.8歳)/女性209名(56.5±6.1歳)であった。データベース上で、収集予定項目の90%以上の情報を得られていない対象者数は約800名であるが、収集予定項目の90%以上の情報を得られた対象者数は約1200名、65歳以上の高齢者も約700名となり、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
リクルートされた対象者の中で、データベースにおける収集予定項目の90%以上の情報を得られていない約800名の対象者の情報を可能な限り収集して、収集予定項目の90%以上の情報が得られるようにする。本年度も、人間ドックおよび外来から、本研究の対象者を新規にリクルートする。新規の対象者が確認されるたびに、リクルートされた対象者に関する各種情報を確認し、新たな対象者に関する各種情報を取り入れたデータベースを作成する。 具体的には、本年度に引き続き、新たな津南町在住の40歳以上の対象者を確認し、糖代謝異常およびその他の生活習慣病に関する身体所見と各種検査項目を確認する。対象者に眼底検査を施行し、眼底所見を確認する。確認された対象者に関する情報は紙媒体を経由して、担当研究者もしくは担当研究者に依頼された入力作業員がデータに入力する作業を定期的に継続していく。HbA1c値による分類でも境界領域の糖代謝異常を抽出する。さらに、境界領域の糖代謝異常の抽出において、可能な場合には経口ブドウ糖負荷試験を施行する。 今後は、高齢者の境界型糖尿病における生活習慣病関連疾患や網膜関連疾患に関する内科的リスクファクターを評価、検討していく予定である。具体的には、ロジスティック回帰分析や重回帰分析などの多変量解析を用いて、生活習慣病関連疾患や網膜関連疾患の内科的リスクファクターを検討する。さらに、高齢者群とそれ以外の年齢群との比較検討をするために、年齢別の層別解析を施行して、高齢者群における生活習慣病関連疾患や網膜関連疾患の内科的リスクファクターの特徴も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に実施される町立津南病院の人間ドックからも、新たな対象者をリクルートすることを予定している。すでに実施された町立津南病院の人間ドックの受診者や町立津南病院の内科外来を受診した患者の中からも、津南町在住の40歳以上の、新たな対象者をリクルートし、糖代謝異常およびその他の生活習慣病に関する各種検査項目を測定することを予定している。 次年度も必要とする、血清脂質分析試薬、一般血液検査試薬、尿分析試薬に関して、測定キットの購入費を、次年度の研究費から支出する予定である。次年度も尿中アルブミン排泄量を測定するための測定キットの購入を予定している。 次年度もリクルートした対象者から得られた情報を紙媒体より、定期的にデータベースに入力する。本年度に引き続き、データベースへの定期的な入力をおこなう研究支援者である入力作業員を雇うための雇用費を、次年度の研究費から支出する予定である。次年度はデータベースに入力するデータがとても多くなることが予想されるため、複数の入力作業員を雇用する可能性もある。 データベースの長期的な管理にはデータベースをデジタル媒体だけではなく、紙媒体として管理することも重要である。データベースを紙媒体として管理することを継続するため、その整理目的に紙媒体および整理文具などを購入している。紙媒体および整理文具などの購入費を、次年度の研究費から支出する予定である。具体的にはA4版、B4版、A3版などの用紙や各種バインダーなどの購入を予定している。 次年度は、研究の成果を学会や論文に発表することを予定しており、学会参加の旅費なども、次年度の研究費から支出する予定である。
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