研究概要 |
大腿骨近位部の構造特性評価法であるHip structure analysis(HSA)が日本人女性において向こう15年間の大腿骨近位部骨折のリスクを表すかどうかを評価し、看過できないリスクから逆算して求めたHSA指標値として介入開始基準の設定を試みる。 本研究の母体となるJapanese Population-based Osteoporosis (JPOS) Cohort Studyの7調査地から4調査地で骨密度測定を含む15年次追跡調査を実施し、未受診者には骨折把握のためのアンケート調査を実施した。別1地域では骨折把握のためのアンケート調査のみ実施した。初回調査を完遂した当時40歳以上者で、追跡調査時に近隣に居住していた1570人を対象とした。2地域では死亡者でも追跡時に遺族が居住する場合は骨折アンケートの対象とした。 受診時の問診で879人に、骨折アンケートで564人に15年間の主要骨粗鬆症性骨折者164人、大腿骨近位部骨折者は36人が確認された。大腿骨近位部骨折者は非骨折者に比べて有意に高齢、低体重、低骨密度で、HSA指標はいずれも劣っていた。Cox比例ハザード回帰で年齢と推定体積骨密度を調整すると、有意なHSA指標は最狭頸部の骨面積、断面係数、外径、内径、皮質骨厚のみとなった。赤池情報量基準によれば、最もよくデータに適合したのは断面係数で、年齢・骨密度調整ハザード比は1SD上昇当たり0.521(95%信頼区間0.319, 0.854)であった。本集団の10年間の同骨折累積発生率は0.25%に、断面係数1SD低下当たりの粗ハザード比3.08を適用すると、2.2SD低下でアメリカ骨粗鬆症協会が治療を推奨する3%となった。 HSA指標の内、大腿骨近位部骨折の予測に最も強い影響を持ったのは最狭頸部の断面係数で、平均より2.2SDの低下で介入開始基準となった。
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