研究課題/領域番号 |
23659373
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
神田 芳郎 久留米大学, 医学部, 教授 (90231307)
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研究分担者 |
副島 美貴子 久留米大学, 医学部, 講師 (80279140)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | タンパク定量 / リアルタイムPCR / 抗原抗体反応 / 比較定量法 |
研究概要 |
法医学領域では、死因の特定や死亡直前の病態の推定に生化学的検査データが有用な場合があり、意義のある生化学的マーカーの探索と有用性の検証がおこなわれている。当該研究計画では、法医鑑定の補助検査の一つとして、自施設で実施可能で、迅速、簡便な、死体試料中の生化学的マーカーの定量法を確立し、死因究明や病態の推定に寄与することを目的としている。当該年度では、最近遺伝子発現解析技術を応用し開発され、当該研究の着想の起点となったTaqMan蛋白質定量法(TaqMan protein Assay)を用い、複数のターゲットのうちC反応性タンパクについて、精製標品をターゲットとして条件検討をおこなった。ところが計画遂行中に、他メーカーより同様のシステム(Proseek)が発売されることになった。TaqMan protein Assayではターゲットと抗体の反応にligaseを使用しているのに対し、Proseekは血清での使用実績がありT4 DNA polymeraseが採用され夾雑物の多い生体サンプルを用いた検査に適していると考えProseekを用いることにした。C反応性タンパクについてアッセイ系を構築した結果、ダイナミックレンジ(検出可能範囲)は1 nM~0.1 pMであった。そこで剖検例の血液サンプル(血清)を試料として定量したところ、検査委託会社に依頼して得られた値と相関は見られたものの、再現性が乏しいという結果となった。この理由として、生体内濃度は検出可能範囲を大きく超えるため希釈倍率が高いことが挙げられ、次年度で解決すべき課題である。さらに、トリプターゼとミオグロビンについても同様に解析をおこなったが、現在までのところ十分な感度が得られていない。原因の追究と方法による感度や煩雑さの比較検討のためにELISA法による定量を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新製品の発売に伴い当初予定していたシステムから移行し実施した。本システムには、生体試料に強いこと、抗体のビオチン化が不要であるというメリットがある反面、抗体濃度や添加物の含量に制限があるため抗体の選定と、さらに低感度の検出系の原因究明に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおりシステム変更をおこなったこと、当該年度に検討したC反応性タンパク、トリプターゼとミオグロビン3つの生化学マーカーの検出系のうち、2つについては検出感度が低かったため、その原因究明のために時間を要し、次年度に使用する研究費が発生した。プローブが十分ラベルされているのかどうかを確かめるためにゲル電気泳動をおこなったが、特に問題は認められなかった。一方Proseekシステムで使用したのと同じものを含むいくつかの抗体を用いてELISA法をおこなったところ、抗体間で検出感度に大きな差異が認められた。したがって最終年度となる次年度では、トリプターゼとミオグロビンについて、ELISA法で結果が良好であった抗体を候補として抗体の選定をおこなう。また、希釈検体を用いた結果の再現性が悪かったC反応性タンパクについては、希釈液の検討をおこなう必要がある。高感度で再現性・特異性の高いシステムの構築が完了したら、出来る限り多くの剖検例の血液、尿を用いて、溶血や腐敗等悪条件が結果に及ぼす影響を含む方法の検証をおこなう。また、ELISA法による結果や、業者への委託検査結果とこれらの検査データを比較し結果の妥当性を評価する。結果が著しく異なる場合には、サンプルの前処理方法について検討する。以上の計画により、自施設で実施出来る簡便な生化学的マーカー定量法の導入の可能性を提案したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
検出系の感度と特異性は抗体に拠るところが大きいが、抗体も既成のアッセイシステムのいずれも高額であり、これらの購入費用を主要な使用経費として予定している。また、ELISA法で用いる検出試薬、消耗品、さらに希釈液等の費用も必要である。
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