炎症局所の線維芽細胞は程度の差はあれ活性化している。従来、これはプロフェッショナル免疫細胞活性化の結果とみなされ、線維芽細胞を炎症の治療標的とする研究はなかった。本研究では炎症局所線維芽細胞の異なる活性状態を代表する2疾患(関節リウマチ[RA]、多発性筋炎[PM])モデルをプロトタイプとして、 (1)炎症局所の線維芽細胞の由来・動員機序、 (2)活性化とその維持機構を解析し、 (3)線維芽細胞を標的とした新たな炎症制御法を模索し、線維芽細胞病理学を確立することを目的とした研究を行った。 RAモデル研究においては、関節炎の主病態である滑膜炎を形成する滑膜線維芽細胞の起源と動態を明らかにし、新たな治療法を開発することを目的に検討を行った。線維細胞が病的滑膜線維芽細胞の起源である可能性や、滑膜炎の病態に関与する可能性につき明らかにするため、マウスの末梢血・骨髄細胞からの線維細胞の同定と培養系の条件を確立した。今後、この細胞を用いて、関節炎を発症したマウスより回収した線維細胞を、他のマウスに移入し、関節炎の発症過程への影響を検討することにより線維芽細胞病理学へとつなげることができる。 PMモデル研究においては、筋炎において、筋組織にリンパ球・マクロファージ・線維芽細胞などの遊走を起こす因子の同定を試みた。筋肉の壊死・再生過程や前駆細胞からの分化過程において、筋肉に発現する細胞遊走因子のスクリーニングの結果は、ある種のケモカインが細胞誘導に関与していることを示していた。
|