【目的】高齢者の慢性炎症の指標として、赤血球に蓄えられている酸化ストレス履歴を利用できるか否かを検討する。また、酸化ストレス履歴と高齢者の貧血との関連性を解析する。 【方法】愛媛大学医学部附属病院抗加齢センターにおける「生活習慣病、動脈硬化症、ならびに抗加齢医学に関する遺伝疫学研究」の一環として、愛媛大学医学部附属病院抗加齢センターで実施している抗加齢ドックの受診者のうち、本研究の趣旨をご理解いただき、同意書にご署名いただいた方々363名より提供いただいた血液から赤血球分画を分離し、総タンパク質量、タンパク質中の還元型SH基の含有量、酸化脂質含有量、メトヘモグロビン比率を測定した。 【結果】(1)赤血球膜SH基量は、収縮期血圧、上腕・足首脈波伝達速度、空腹時血糖、HbA1cと負の相関、中性脂肪と正の相関があった。 (2)赤血球膜酸化脂質量は、拡張期血圧、赤血球数、eGFRと負の相関があった。 (3)SH基量と上腕・足首脈波伝達速度との相関は男性において強いが、女性においては有意性を認めなかった。 (4)炎症性マーカーである高感度CRPと貧血との間には、関連性を認めなかった。また、赤血球に蓄えられている酸化ストレス履歴(赤血球中のメトヘモグロビン比率、赤血球膜タンパク質中の還元型SH基の含有量、酸化脂質含有量)と暦年齢との間に関連性は認めなかった。 【意義】男性における赤血球膜タンパク質SH基量は動脈硬化度と高い負の相関があり、男性における動脈硬化度の指標となり得ると考える。また、男性における赤血球膜酸化脂質含有量と貧血とは高い負の相関があり、男性における貧血の指標となり得ると考える。女性においては有意性を認めなかったことより、女性特有の因子(例えば女性ホルモン)の関与が示唆される。
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