研究課題/領域番号 |
23659382
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
三木 哲郎 愛媛大学, プロテオ医学研究センター, 教授 (00174003)
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研究分担者 |
小原 克彦 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30260384)
田原 康玄 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (00268749)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フレイルティ / 立位動揺性 / 重心動揺 / 動脈硬化 / 脳血管障害 |
研究概要 |
本年度は、当初の予定通り立位動揺性の加齢性変化と体組成との関連について検討した。解析対象1424名の平均年齢は66歳であった。開眼片足立ち時間の測定は60秒を最大とした行ったが、60秒間持続できたのは1066例(74.9%)であった。持続群と非持続群とを比較すると、非持続群(72.7歳)は持続群(64.0歳)に比して有意に高齢(p<0.001)であり、男性が多かった(45.0 vs. 36.9%, p=0.007)。体組成との関連では、非持続群では身長が低く(156 vs. 158cm, p=0.006)、内臓脂肪の蓄積が多かった(117 vs. 99 cm2, p<0.001)。多変量解析の結果から、開眼片足立ち時間に独立して関連した因子は、加齢と内臓脂肪の蓄積のみであった。一部の対象(1266例)において下肢(大腿部断面)の筋肉量をCT像から求め、片足立ち時間との関連を検討した。その結果、非持続群では有意に筋肉量が低値であった(108, 112cm2, p=0.03)。そこで年齢、性別、内臓脂肪量、大腿筋肉量を共変量として多変量解析を行ったところ、大腿筋の減少も片足立ち時間の有意な説明因子として抽出された。同様の検討を重心の総移動距離に対して行ったところ、年齢、性別、内臓脂肪量のみが説明因子として抽出され、大腿筋面積は関連しなかった。片足立ち時間に比して、立位を維持するのみの静的な条件下では、筋肉量は立位動揺性に関連しないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々が愛媛大学医学部附属病院で運営する人間ドック(抗加齢ドック)の受診者を対象としてデータの収集を行った。重心動揺性は重心動揺計 GS-5500(アニマ社製)を用いて評価した。開眼片足立時間は60秒を最大として開眼での片足立ち保持時間を測定した。脚の選択は被検者の自由とし、2回測定のうち最大値を評価に用いた。骨密度は踵骨の超音波伝播速度で評価した(CM-100、エルクコーポレーション)。測定は左右両脚で行い、平均値を評価に用いた。無症候性脳血管障害は頭部MRI画像から評価した。脳血管障害の評価は、無症候性ラクナ梗塞、側脳室白質病変、微小出血について行った。軽度認知機能障害はMCI screenを用いて評価した。MCI screenは直後再生・遅延再生・遅延自由再生・手がかり再生等に関する対面式のテストバッテリーであり、MCIに対する感度・特異度が極めて高い。これまでに脳萎縮やMCI、あるいは生命予後との相関が報告されているリスク因子について測定した。具体的には、血圧(起立性血圧変化や24時間自由行動下血圧を含む)、インスリン抵抗性、内臓脂肪(腹部CT)、頸動脈内膜肥厚(IMT)、脈波伝播速度(PWV)を測定した。当初の計画に照らして予定通りに実施できた。データ解析では、断面的な検討から立位動揺性(重心動揺/片足立時間)の加齢性変化、体組成との相関について検討し、前項に示すような結果を得た。この点においても、当初の計画に照らして順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
【臨床情報の収集】前年度の計画を踏襲して継続的に更なるサンプル・臨床情報の収集を行い、解析規模の拡大を目指す。研究過程で新たな動脈硬化指標や臨床マーカーが見いだされた場合は、随時、収集項目に追加していく。【横断的な解析・検討】前年度と同様の計画で横断的な解析を行う。解析サンプル数の増加が見込めることから、前年度までに比し、新たな知見が得られるものと期待される。MCIの評価には再現性の問題が指摘されていることから、抗加齢ドック2年目の受診データを元に、脳萎縮や重心動揺との相関について、再現性の検討も行う。【縦断的な解析・検討】心血管系疾患(脳卒中・心筋梗塞)の発症に関する追跡調査を行い、症例数が蓄積されれば縦断的な解析から心血管系イベントの発症に対する立位動揺性の予後予測能について評価する。統計解析においては、近年、欧米で多く用いられているPartial least square法(PLS法)を用いる。この方法では、各変数間の共線性を考慮しながら変数の次元を削減できるため、疾患発症の効率よい予測が可能になると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
データを収集する上で必要な消耗品、血液検査委託費用、成果発表旅費としての使用を予定している。
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