研究課題/領域番号 |
23659383
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
乾 明夫 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80168418)
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研究分担者 |
浅川 明弘 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10452947)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 麹 / インスリン抵抗性 / 高脂肪食 / 抗肥満作用 / 筋肉 |
研究概要 |
サツマイモ焼酎製造に用いる麹やその副産物である焼酎粕には、種々の栄養成分が含まれている。例えば、もろみ酢成分をマウスに投与した研究で、食欲増進作用、抗酸化作用、抗腫瘍能、脂質低下作用などが認められている。しかし、麹や焼酎粕の機能性の解明や有効成分群の同定は、未だ不十分な現状にある。今回の研究は、麹や焼酎粕の機能性成分についてマウス等を用いた基礎研究で解明し、その有効成分(群)を抽出すること、麹やもろみ酢をはじめとする一部の機能性成分の、悪液質やメタボリックシンドロームへの臨床応用について検討すること、さらに、有効成分を濃縮、乾燥、粉砕するための技術開発を行い、焼酎粕を原料とした新たな機能性を持つ薬剤と食品素材応用を検討することが目的であった。平成23年度は、麹の影響に関し、赤、黄、白の3種類の麹を用いて、in vitroおよびin vivoの両者を用いて研究を行った。赤麹および白麹は、L6 myotube細胞での糖の取り込みをGLUT4を介して促進し、また4週間の高脂肪食を用いて作製した肥満、および糖尿病マウスモデルにおいて、赤麹および白麹の添加は、体重や体脂肪量の増加を抑制し、血糖、インスリンやレプチン値を低下させ、インスリン感受性を亢進させる事が示唆された。しかしながら、肝重量や褐色脂肪重量、中性脂肪やコレステロール値、摂食量には有意な差は認めなかった。以上の事実より、一部の麹および麹成分に、ヒト肥満モデルである高脂肪食誘発マウスに抗肥満効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究は概ね順調に経過し、赤、黄、白麹を用いた研究成果は、論文として作製中であり、間もなく投稿できると考えている。この論文には、肝での脂肪酸代謝に関わる酵素も定量し、その解析結果が含まれる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は活性成分の抽出や動物実験を継続すると共に、臨床研究を並行して行う。1<もろみ酢成分の機能性に関する研究>肥満・メタボリックシンドロームの患者を対象に、動物実験で中性脂肪の低下作用が認められるもろみ酢成分を、2カ月経口投与する臨床試験を、クロスオーバーデザインで実施する。血中脂質、耐糖能、血圧、食欲、疲労、健康感等、質問紙法を用いて解析する。この研究は、すでに鹿児島大学倫理委員会で承認を得ている。2<焼酎成分の機能性に関する研究> 健常者を対象に、焼酎成分に機能性、特にほろ酔い、悪酔いや糖代謝、精神機能に及ぼす影響を検討する。被験者は入院の上、脳波を装着し、夕食と共に焼酎を飲用し、アルコール前後の脳波、睡眠脳波を解析し、質問紙法による精神機能の評価や、アルコール、血中代謝産物の測定を行う。ビール、日本酒との比較試験も行うが、この研究は睡眠解析が行える関連病院で施行され、すでに関連病院治験委員会の承認が得られている。3<機能性食品への応用> 焼酎関連素材である焼酎粕や麹等から機能性分子を同定し、これを地域関連産業と共に機能性食品の生成を試みる。焼酎学講座そのものが、焼酎関連地場産業からの寄付講座として開設された経緯もあり、科学的に証明された質の高い機能性食品として、地域と一体となった応用研究を展開したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、血清薬理学的ゲノミクスを用いた焼酎関連素材の遺伝子研究や、活性成分抽出のための3次元HPLC解析等を行うため、遺伝子試薬や細胞培養試薬、その他生化学的試薬が消耗品の中心となる。臨床研究においては、心理学的検査一式を消耗品として申請した。これは焼酎および焼酎関連素材、活性因子の不安、抑うつなどの情動に及ぼす影響や、ほろ酔い、悪酔いなどを評価する目的で使用される。各種アルコール代謝産物、血中脂質、インスリン感受性、空腹ホルモングレリンの測定などの臨床試薬費や、脳波測定・解析費も申請した。研究補助は、特に臨床研究を円滑に進めるために申請し、使用される。
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