研究課題/領域番号 |
23659384
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀一郎 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (90532929)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 老年医学 / パーキンソン病 / 6-OHDA / 骨髄間葉系幹細胞 / チロシンヒドロキシラーゼ |
研究概要 |
平成23年度は、片側パーキンソン病モデルラットを作製後、正常ヒト骨髄間葉系幹細胞(hMSC)を投与しその効果を行動薬理学的、免疫組織学的に検討した。具体的な方法としては、6-OHDAを正常ラットの片側線条体に微量投与し、片側パーキンソンモデルラットを作製した。6-OHDA投与2週間後に、メタンフェタミン腹腔内投与による異常旋回運動を確認しモデルラットを2群に分け、1群にhMSCを静脈内投与し(移植群)、他群には溶媒のみを投与した(非移植群)。経時的にメタンフェタミン誘発異常旋回運動を行った後、安楽死させ灌流固定した。凍結切片を作製し、中脳黒質に対してチロシンヒドロキシラーゼ(TH)染色を行った。移植群では非移植群と比較して、有意に薬物誘発異常旋回数は低下を示し、またステレオロジーの手法を用いた免疫組織学的半定量解析では有意にTH陽性細胞数が多かった。hMSCは6-OHDA導入片側パーキンソン病モデルラットの薬物誘発異常旋回運動に対して抑制的に働き、中脳黒質TH細胞に対して保護的に働いている事を確認した。今回、「神経変性疾患の一因は幹細胞供給システムの低下にある」と仮説を立て、神経変性疾患の病因を解明することを全体としての研究課題としているが、本研究の結果からhMSCは中脳黒質TH陽性細胞の脱落に対し抑制的に働くことを示唆するものである、仮説のもと投与したhMSCの細胞動態にも注目しこの機序について解析中である。 また、神経変性疾患(特にアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症を対象とする)患者の末梢血から骨髄間葉系幹細胞(PMSC)を得、これら3疾患を含んだ神経変性疾患以外の患者群のPMSCと比較を行うため、臨床研究審査委員会に書類を提出中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経変性疾患患者と非神経変性疾患患者の末梢血を採取し骨髄幹細胞を分離・培養後、多角的に比較検討する実験計画を最初に予定していたが、自主臨床研究への書類の用意、研究室の整備等で予定より時間を要したため、平成24年度以後に予定していた計画を前倒して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
6-OHDA導入片側パーキンソン病モデルラットに対する正常ヒト骨髄間葉系幹細胞の静脈投与による行動薬理学的、免疫組織学的改善効果の機序に関して解析を進める。また、アルツハイマー病遺伝子改変マウスに対しても同様の方法で改善が得られるか検討を進める予定である。 また、神経変性疾患患者(アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症)の末梢血由来骨髄間葉系幹細胞(PMSC)と非神経変性疾患患者のPMSCをそれぞれ分離・培養し、特に、増殖能、神経系への分化能、遊走能や生着能(ケモカインの産生や接着因子の発現)、栄養因子の産生能に着目して多角的に比較解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定した末梢血由来骨髄間葉系幹細胞を採取・培養するための細胞培養試薬・器具や各種試薬が上記理由のため未実施となったため、次年度に使用する計画である。引き続き、実験動物の飼育料、細胞培養試薬、器具、試薬等の為の部品費に使用する計画である。また、学会発表、論文作成費を研究費として計上予定である。
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