1. 絶食ストレス負荷後のAF5q31へテロ欠損マウスにおけるHPA axisの異常を検討した。野生型マウスでは、絶食により血清ACTHと血清コルチコステロンの濃度が上昇したが、AF5q31へテロ欠損マウスではこれらの上昇が認められなかった。このことから、AF5q31へテロ欠損マウスではストレス負荷時のHPA axisの反応性低下が示唆された。また、絶食ストレス負荷後の自発運動量について検討したところ、野生型マウスでは絶食により自発運動量の増加が認められたが、AF5q31へテロ欠損マウスでは野生型と比較してその増加が軽度であった。 2. AF5q31へテロ欠損マウスにおける体温変化について検討した。絶食により野生型マウスでは著明な体温低下が認められたが、AF5q31へテロ欠損マウスでは絶食による体温の低下はほとんど認められなかった。 3. AF5q31へテロ欠損マウスにおける糖代謝異常について検討した。AF5q31へテロ欠損マウスに対して、腹腔内糖負荷試験とインスリン負荷試験を行ったところ、耐糖能異常とインスリン抵抗性が認められた。 4. 前年度の結果より、AF5q31はAMPKα2の発現を増加させ、AMPKシグナルを活性化させることが明らかとなっている。AMPKシグナルの活性化は、ACTHの発現増加や糖代謝改善作用を引き起こすため、AF5q31へテロ欠損マウスにおけるHPA axisの反応性の低下やインスリン抵抗性などの表現型にはAMPKシグナルの異常が関与している可能性が示唆された。 5. 神経性食思不振症の患者と同様にAF5q31へテロ欠損マウスでは、ストレス負荷後の摂食量の低下や糖代謝異常、体温異常、HPA axisの異常が認められた。これらの結果より、AF5q31へテロ欠損マウスはヒトの神経性食思不振症のモデルとして適切なモデルとなる可能性が示唆された。
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